Mastercardは、アフリカのステーブルコイン事業者Yellow Cardと提携し、東欧・中東・アフリカ(EEMEA)地域でステーブルコイン決済の実用化に向けた検証に乗り出す。越境送金やB2B決済などを対象に、安全性と規制対応を踏まえた運用モデルの構築を進める。
フィンテックメディアのFinextraが7日(現地時間)に報じた。両社は、送金や企業向け決済など主要な金融分野で、ステーブルコインの活用可能性を共同で探る。
対象分野は、越境送金、B2B決済、デジタルロイヤルティ分野、財務管理の4領域。銀行や金融機関、規制当局と連携し、安全性と規制対応の要件を満たすステーブルコインソリューションを試験運用する。あわせて、企業と消費者の決済効率を高め、コストを抑える手法も検証する。
初期の重点市場は、ガーナ、ケニア、ナイジェリア、南アフリカ、アラブ首長国連邦(UAE)。共同のワーキンググループを設け、効果の大きいユースケースを選定した上で、Mastercardのネットワークに接続する銀行・金融機関が既存の金融システムとブロックチェーンベースの決済を連携できる相互運用モデルの開発を目指す。
今回の提携は、暗号資産決済の導入自体よりも、新興市場に残る決済インフラの空白を埋めることに重点を置く。Yellow Cardの最高経営責任者(CEO)、クリス・モリス氏は、新興市場は決済イノベーションにとって最大の機会の一つだとした上で、成功には現地市場への理解と規制対応が欠かせないと述べた。
モリス氏はさらに、Yellow Cardは従来の銀行サービスが十分に行き届いていない地域で、規制に準拠したステーブルコインインフラを構築してきた実績があると説明。Mastercardのグローバルネットワークと組み合わせることで、国境をまたぐ資金移動を必要とする企業や消費者に、より良い選択肢を提供できるとの見方を示した。
Mastercardも、ステーブルコインを一部の決済領域で有効な手段と位置付ける。EEMEA市場開発担当シニアバイスプレジデントのメテ・ギュネイ氏は、ステーブルコインは特定の決済分野で実用性の高い選択肢になり得るとし、Yellow Cardと追加のユースケースを共同で開拓していく方針を明らかにした。
ギュネイ氏は、Mastercardのネットワークとノウハウを活用することで、ステーブルコインを活用した決済をより円滑かつ安全にし、越境取引やB2B決済、デジタル資産のセキュリティ分野で新たな効率化につなげられると説明した。
今回の提携は、Mastercardが拡大してきたブロックチェーン関連のエコシステムと、Yellow Cardの事業基盤を結び付ける取り組みといえる。Yellow Cardは、アフリカの主要市場でライセンスを保有するステーブルコイン事業者の一つとして紹介されている。
両社は、実利用を重視したデジタル資産イノベーションを共通目標に掲げる。
市場環境では、新興市場を中心にステーブルコイン規制の明確化が進み、機関投資家などによる採用も広がりつつある。今回の取り組みは、既存金融とブロックチェーン決済をつなぐ、安全性と拡張性を備えたデジタル決済モデルを検証する事例となりそうだ。
とりわけ、銀行や金融機関が直接関与する枠組みを前面に打ち出しているだけに、今後の実用化に向けては、各国規制当局との協議、実証の成果、相互運用性の確保が焦点となる。