ポーランドで暗号資産規制の法整備が停滞している。政府案と大統領案が並立する異例の展開となり、欧州連合(EU)の暗号資産規制枠組み「MiCA」の国内法化にも遅れが生じている。対応期限は2026年7月1日だが、政界の対立が長引くなか、制度の先行きは不透明だ。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが7日(現地時間)に報じたところによると、ポーランドは期限までにMiCAを国内法として整備する必要がある。しかし、政権と大統領府の対立が立法作業の足かせとなっている。
カロル・ナブロツキ大統領は、暗号資産取引を対象とする独自法案を下院に当たるセイムへ提出した。ドナルド・トゥスク首相率いる政権が進めてきた「暗号資産市場法」に対抗する位置付けだ。
ナブロツキ大統領は過去数カ月で政府案に2度にわたり拒否権を行使した。与党は再可決によって拒否権を覆そうとしたが、議会内の保守・民族主義勢力の反対で実現しなかった。この結果、審議は単一法案の処理から、政府案と大統領案が競合する構図へと変わった。
大統領側は、新法案の柱として、消費者・投資家保護、実効性のある監督体制、業界企業の権利保障を掲げている。Bitcoin.comとMoney.plによると、ズビグニエフ・ボゴツキ大統領府官房長は記者会見で、これら3点が法案の中核原則だと説明した。また、暗号資産市場の規制整備を待ってきた市場関係者全体を視野に入れた法案だと述べた。
一方、政府側も譲らない。トゥスク首相は6日、拒否権が行使された政府案について、早ければ週内にも議会へ再提出する可能性があると明らかにした。内容は大幅には変えない見通しだが、最近の取引所の流動性危機を踏まえ、暗号資産投資家を欺いたプラットフォームや個人に対する罰則を強化する方針だという。
政府案には、ポーランド金融監督庁(KNF)の権限拡大も盛り込まれている。捜査当局が動く前の段階で、KNFが投資家に事前警告を出せるようにする内容だ。ただ、国内の暗号資産業界は、監督当局に過度な権限を与えかねないとして反発してきた。ナブロツキ大統領も、政府案を阻止した理由として、過剰な規制と中小企業への負担を挙げている。
こうした対立には、最近経営破綻したZondacryptoの問題も影を落としている。ポーランド系の取引プラットフォームであるZondacryptoでは4月初め、流動性問題のなかで顧客資金へのアクセスが遮断された。最大で3万人のポーランド人が影響を受けた可能性があるとの見方も出ている。
トゥスク政権の関係者は、野党政治家や大統領が規制法案の成立を妨げ、危機を拡大させたと批判している。さらに、エストニアで登録されたこの暗号資産企業が、ポーランドの保守系政治イベントや関係者を支援し、政府案への反対運動を後押ししたとの指摘も浮上している。
争点は国内政治にとどまらない。ポーランドは2026年7月1日までにMiCA基準を国内法化しなければならず、暗号資産サービス提供事業者はそれまでに許認可を取得する必要がある。もっとも、ナブロツキ大統領が政府案に再び拒否権を行使する可能性は高く、大統領案についてもセイムで十分な賛成を確保できるかは不透明だ。
暗号資産市場では規制導入の必要性そのものには理解が広がっているが、監督の強さや業界負担を巡る政治対立が、施行期限を前に不透明感を強めている。法整備の遅れが長引けば、取引所やサービス事業者の許認可準備にも影響が及ぶ可能性がある。