米暗号資産取引所大手Coinbaseの時価総額が、2031年に3000億ドル(約45兆円)へ拡大する可能性がある――。ブロックチェーンデータプラットフォームArtemisのジョン・マーCEOが、ステーブルコイン市場の拡大やAIエージェント経済の成長を前提にした強気シナリオを示した。
ブロックチェーンメディアBeInCryptoが5月7日(現地時間)に報じた。マー氏はCoinbaseに関するオープンソースの財務モデルを公開し、強気ケースとして同社の時価総額が3000億ドルに達するとの見通しを示した。
今回の試算の特徴は、Coinbaseを単なる暗号資産取引所ではなく、AI中心の金融インフラ再編で恩恵を受ける有力企業と位置付けている点にある。
モデルでは、2031年までにステーブルコインの供給拡大、AIエージェント経由の商取引の拡大、サブスクリプション・サービス中心への収益構造の転換が同時に進むことを前提とした。
最大の前提となるのは、ステーブルコイン市場の拡大だ。マー氏は2031年のステーブルコイン供給総額が3兆ドル(約450兆円)に達すると見込む。
この見通しは、スコット・ベッセント米財務長官が2030年時点について示した予測の延長線上にあるという。このうちUSD Coin(USDC)が30%を占めると仮定した。CoinbaseはCircleとの提携を通じ、USDCの流通に深く関与している。
もう1つの柱が、AIエージェント経由の商取引だ。Artemisは、2031年にAIエージェントが年間7兆5000億ドル(約1125兆円)の支出を生み出すと推計した。
Coinbaseはこの決済フローから1ベーシスポイント(bp)相当を取り込む想定だ。Coinbaseは現在、CloudflareとともにLinux Foundationのx402プロトコルの運営に参加している。
収益構造の変化もモデルに織り込んだ。サブスクリプションおよびサービス売上高の比率は、現在の約40%から2031年には65%まで上昇すると仮定した。
取引高の変動に左右されやすい収益の比率が低下し、継続課金型の売上高が拡大する構図となる。
マー氏は「強気シナリオでは、Coinbaseの2031年の売上高は約230億ドル(約3兆4500億円)、純利益は約100億ドル(約1兆5000億円)に達する」と説明。「株価収益率(PER)30倍を適用すれば、時価総額は約3000億ドルとなり、足元から6倍超の水準になる」と述べた。
この見方は、Coinbaseが進める組織再編の方向性とも重なる。今週、ブライアン・アームストロングCEOは、従業員を約14%削減し、より機動的で迅速なAIネイティブ組織へ移行する方針を明らかにした。
意思決定の階層を減らすとともに、複数のエージェントを管理するAIネイティブ型のポッド組織も構築したという。
アームストロングCEOはエンジニアに対し、AIが生成したコードの比率を日々の開発成果の50%超まで引き上げるよう求めた。Coinbaseはあわせて、機械間決済に対応するエージェントウォレットも投入している。
こうした組織改革と製品戦略は、マー氏の財務モデルが置く前提とおおむね重なる。
もっとも、この6倍シナリオの実現には条件も多い。ステーブルコインを巡る政策環境が引き続き追い風となることに加え、AIエージェントによる商取引が実際に普及することが前提となる。
USDCが新規競合の参入下でもシェアを維持できるかどうかも、不確定要因の1つだ。
一方、同モデルの弱気シナリオでは、Coinbaseの時価総額は約700億ドル(約10兆5000億円)にとどまる。Coinbaseの長期的な企業価値は、取引所手数料よりも、ステーブルコインとAI決済インフラをどこまで拡大できるかに大きく左右される可能性があることを示した。