Metaが、コロンビアとフィリピンの一部Facebookクリエイターを対象に、ステーブルコイン「USDC」による報酬支払いの試験運用を始めた。SolanaとPolygonのネットワークを活用し、越境支払いにかかる時間や手数料の圧縮を狙う。
ブロックチェーン専門メディアのCryptopolitanが4月29日(現地時間)に報じた。Metaは、国境をまたぐ支払いの遅延やコストを抑えるパイロットプログラムを進めているという。
今回の取り組みは、かつて「Libra」として始まり、その後「Diem」に改称された独自デジタル通貨構想を撤回して以降の新たな方向性を示すものだ。独自の決済手段を構築するのではなく、既存のステーブルコインとブロックチェーン基盤を使って、実務上の精算効率を高める方針に軸足を移した。
Metaの広報担当者は、ステーブルコインを幅広い決済手段の選択肢の一つとして検討していると説明した。今回の試行ではMetaが現金で支払うのではなく、報酬をUSDCで付与する形を採る。最終的な換金や、その際に発生する手数料はクリエイター側の負担となる。
仕組み自体は比較的シンプルだが、利用者には追加の対応が必要になる。クリエイターは受け取ったUSDCを、取引所などを通じて現金化しなければならない。Metaはこの過程での税務申告対応を支援するため、Stripeと連携している。
試験地域としてコロンビアとフィリピンが選ばれたのは、いずれも海外からの支払いに関してコストやスピードの面で課題を抱えているためだ。フィリピンでは越境収入への依存度が高いクリエイターが多く、従来の精算には数日を要し、手数料も高くなりがちだという。
コロンビアでも、大都市圏以外では銀行サービスへのアクセスに偏りがあり、モバイル型の暗号資産ウォレットが代替手段になり得る点が考慮されたとされる。
もっとも、実際の利用ハードルが解消されたわけではない。ウォレットの管理や資金移動、現金化までを利用者自身が担う必要があるためだ。報道によれば、ステーブルコインの活用で時間とコストを削減できても、暗号資産を現金に換える段階は依然として障壁として残っている。
市場では今回の動きを、Metaの本格展開というより、戦略転換を示すシグナルと受け止める向きがある。過去のように世界の金融秩序そのものに挑むのではなく、迅速で国境を越えやすい支払い手段が実務上の課題を解決できるかを見極める段階に入ったとの見方だ。
Cryptopolitanは、この動きを大きな公約や新通貨を伴わない「静かな復帰」と表現した。
同様の動きは他社にも広がっている。Shopifyは販売事業者がUSDCを受け取れる仕組みを整えており、Western UnionとDoorDashも、グローバル送金やギグワーカーへの支払いにステーブルコインを活用することを検討しているという。Metaの試みは、クリエイター報酬の分野でステーブルコインの実用性を探る事例といえそうだ。
今後の拡大可能性も取り沙汰されている。Polygon Labsの最高経営責任者(CEO)、マーク・ボイロン氏は、Metaのプログラムが2026年末までに160カ国以上へ広がる可能性があると述べた。
現時点では小規模な試行にとどまるが、規制負担の重い独自コインの発行ではなく、既存のステーブルコインを使った決済へとかじを切った点は注目される。今後は対象国や利用者の拡大につながるかが焦点となる。