2026年下期のMMORPG市場で、Netmarble、Kakao Games、Com2uS、Smilegateの4社が新作を相次ぎ投入する。各タイトルは、ユーザーが運営に関与する仕組み、実績あるIPの継承、神話を前面に押し出した世界観、長時間プレイの負担軽減といった切り口で差別化を図っており、同時期の競合を通じて、どの戦略が市場で通用するかが注目される。
4作品はいずれも、MMORPGが長年抱えてきた課題に対する異なる答えを提示している点が特徴だ。技術面ではUnreal Engine 5の採用やPC・モバイルのクロスプラットフォーム対応が共通しており、勝負の軸はゲーム設計そのものと、正式サービスでの運用力に移りつつある。
◆4タイトルが示す、それぞれのアプローチ
Netmarbleは新作MMORPG「ソル:インチャント」を6月にリリースする。開発は、「リネージュM」の中核開発陣が設立した新興スタジオAltnineが手掛け、Netmarbleがパブリッシングを担う。当初は4月24日のリリースを予定していたが、経済バランスの調整やグラフィックス、UI/UXの最適化など、完成度を高めるため日程を見直した。
同作の最大の特徴は、従来は運営側が握ってきた権限の一部をユーザー側に開く点にある。サーバー、ワールド、全体の3段階で構成される「神権」システムを通じて、ユーザーはアップデート仕様の決定や、BM関連要素の開放、コンテンツ公開などに関与できる。
また、既存のゲーム内通貨であるゴールドを廃止し、独自通貨「ナイン」を導入。有料アイテムの取引所売買も認める。Netmarbleは、神権システムを通じて、運営権限そのものをユーザーへの報酬設計に組み込む試みと位置付けている。
一方で、オフラインプレイや複数キャラクターの同時育成といった、運営上センシティブな要素も取り入れる。これに対し開発陣は、AIを活用した検知システムや監視体制の強化で対応する方針を示している。
Kakao Games子会社のLionheart Studioが開発する「オーディンQ」は、2026年第3四半期のグローバル展開を目指す。軸となるのは、実績あるIPの継承だ。
前作「オーディン:ヴァルハラ ライジング」は、リリース直後にGoogle Playの売上ランキングで18週連続首位を維持し、モバイルMMORPG市場の構図を変えたとされる。「オーディンQ」は、前作で築いたファン層と世界観を受け継ぎつつ、Unreal Engine 5によるフル3Dのシームレスなオープンワールドと、協力プレイ中心の戦闘を通じて完成度を高める考えだ。
知名度の高いIPを使うことで初期ユーザー獲得の不確実性を抑えられる半面、前作が築いた高い期待に応える必要もある。
Com2uSは、Abyrtonが開発する「ゼウス:傲慢の神」で下期市場に参入する。ギリシャ神話をベースにした独自の世界観と、勢力間の競争構造を前面に打ち出したタイトルだ。西洋中世ファンタジーが主流のMMORPG市場にあって、神話を軸に据えた叙事性の強い構成が特徴となる。
物語は、ゼウスの傲慢によって亀裂が生じた世界を舞台に、「神の器」の候補たちが対立する構図で進む。パンドラ、ティタン12神、クロノスの復活を巡る葛藤が展開される。ビジュアル面ではUnreal Engine 5とDLSSを活用し、神話的な背景表現を強化。ゲーム設計では、勢力間の協力と対立を軸に競争構造を組み立てた。
Smilegateがパブリッシングし、NPIXELが開発する「エクリプス:ジ・アウェイクニング」は、2026年内のリリースを目標とする。最大の特徴は、常時接続の負担を軽減する設計にある。未接続時でも財貨と経験値が蓄積される仕組みや、アカウント単位の成長システムを採用し、MMORPGに付きまとってきた時間的負担を下げた。
総括PDのイ・サンムン氏は、既存のMMORPG市場が飽和するなか、これまで同ジャンルを敬遠してきたユーザーにも「自分でも遊べそうだ」と感じてもらえるよう、参入障壁を下げることが最重要の方向性だと説明した。
長時間ログインと反復プレイを前提としてきた従来型MMORPGの構造を緩和する試みといえる。加えて、中核コンテンツ「聖所」は、個人の成長空間でありながら他ユーザーとの相互作用も可能な設計とした。PvPエリアと安全区域を分けることで、意図しない衝突を減らしたとしている。
◆技術の平準化で問われる運用力
4タイトルはいずれもUnreal Engine 5を採用し、PCとモバイルのクロスプラットフォーム展開を掲げる。技術面での差が縮小するなか、競争の焦点は、各社が打ち出した設計思想を正式サービスでどこまで安定して運用できるかに移っている。
大きく見れば、新作群は2つの方向性に分かれる。「ソル:インチャント」と「エクリプス:ジ・アウェイクニング」は、運営構造やプレイスタイルそのものに手を入れる実験色の強いタイプだ。一方、「オーディンQ」と「ゼウス:傲慢の神」は、実績あるIPや世界観を土台に、完成度を積み上げる王道型といえる。
異なる戦略を採る4社が同時期に競合することで、2026年下期の成績は、今後のMMORPG設計の方向性を測る試金石となる可能性がある。
業界関係者は「MMORPGはリリース直後の成果より、3~6カ月後の残存率の方が重要な指標になる。結局のところ、鍵を握るのはシステムの独自性そのものではなく、実際のサービス環境で安定して機能するかどうかだ」と話した。