スタンフォード大学教授で、AI分野の著名研究者として知られるアンドリュー・ング氏が、AIネイティブなソフトウェア開発チームの特徴と、従来型チームとの違いについてXで見解を示した。コーディングエージェントの普及で開発スピードが大きく高まるなか、役割分担や意思決定のあり方に加え、法務やマーケティングなど周辺部門の運営の見直しも必要になると指摘している。
ング氏によると、AIネイティブなエンジニアリングチームの最大の特徴は、コーディングエージェントを使って製品開発を大幅に短縮できる点にある。
開発が速くなれば、チーム構成や各メンバーの役割、意思決定の方法も変わる。優れたエンジニアはコードを書くことにとどまらず、プロダクトマネジャーやデザイナー、場合によってはマーケターの役割まで担うようになるという。
少人数のチームが同じ場所で対面しながら働けば、驚くほど速く動けるとも述べた。
一方で、開発速度が上がるほど重要になるのが、「何を作るか」の判断だ。開発者自身も、その判断にこれまで以上に時間を割く必要があるとした。
このボトルネックに対応するため、エンジニアとプロジェクトマネジャー(PM)の比率を従来の8対1から1対1へ近づけるチームも出てきているという。
ただ、ング氏はそれが最善策とは限らないとの立場を示した。PMが何を作るかを決め、エンジニアが実装する分業モデルでは、両者のコミュニケーション自体が新たなボトルネックになり得るためだ。
最も速く動けるチームは、一定のプロダクト業務まで担えるエンジニアを中心に構成されるという。エンジニアがユーザーを理解し、作るべきものを判断し、自ら実装まで担えれば、実行速度は大きく高まると説明した。
また、コーディングの高速化によって、ボトルネックは企画だけでなく、デザイン、マーケティング、コンプライアンスの各工程にも移り得ると指摘した。機能の実装が速すぎるあまり、マーケティング部門がユーザーへの伝え方の整理に追われるケースもあるという。
同様に、チームがソフトウェアを1日で作れても、法務レビューに1週間かかれば、制約要因は法務に移るとした。
ング氏は、エージェント型コーディングの広がりが、ソフトウェアエンジニアリングのワークフローだけでなく、その周辺にあるあらゆるチームの働き方を変えつつあるとの見方を示した。
こうした環境では、とりわけ小規模なAIチームでジェネラリストの重要性が増すという。従来はエンジニアリング、プロダクト管理、デザイン、マーケティング、法務といった専門家をそろえる形が一般的だったが、2人のチームで5種類の専門性が求められる仕事をこなすには、各自が複数領域を担える必要があるためだ。
その上で同氏は、テック業界ではPMよりエンジニアの人数が多いとしつつ、どちらの職種にも可能性はあると述べた。エンジニアにはプロダクト管理の力を身につけることを、PMには自ら作る力を学ぶことを勧めている。
AI時代の開発チームでは、同じ空間で働くことの価値も改めて高まるという。リモートでも成果を上げることはできるが、全員が同じ部屋で即座にコミュニケーションできる環境は、チームのスピードを最大化しやすいとした。
役割の変化は多くの人にとって容易ではないと認めつつも、関連スキルを学ぼうとする個人や少人数チームが、以前よりはるかに大きな成果を上げられる時代になったとも述べた。ング氏は「今は学び、作る黄金期だ」と締めくくった。