Ethereum共同創業者のビタリック・ブテリン氏は、予測市場が本来の情報集約機能よりも射幸性の高い商品に傾いていると批判し、そのゆがみを利用した逆張り戦略と、将来的なヘッジ中心の金融モデルを提示した。ブロックチェーンメディアのBeInCryptoが4月28日報じた。
報道によると、ブテリン氏は現在の予測市場について、短期的な価格変動やスポーツベッティングのような刺激の強いテーマに偏り、市場の質を損ねていると指摘した。こうした状況を、同氏は「Corposlop」の段階にとどまっていると表現。相場下落時に収益確保を急ぐプラットフォームが、合理性に乏しい商品を大量に投入し、その傾向を強めているとの見方を示した。
一方で、同氏はそうした過熱を逆手に取ることも可能だと説明した。Polymarketでは、大衆の感情に引きずられて実現可能性の低い予測が過大評価される傾向があり、自身はそれと反対側のポジションに44万ドルを投じ、7万ドルの利益を得たという。収益率は約16%に達した。
ブテリン氏はこの手法について、ニュースやSNSが生む刺激的な物語によって、特定の出来事の発生確率を実態以上に高く見積もってしまう「narrative bias」を突いたものだと説明した。Polymarketのデータでは、清算済み市場の73.3%が「No」で決着しており、実際には現状維持となるケースが圧倒的に多いとした。
同様の逆張りで大きな利益を上げた事例もある。元ポーカー選手でPolymarketの大口参加者として知られるドーマーは、ブテリン氏に近い手法で約40万ドルの収益を上げたという。ロバート・フランシス・プレボスト枢機卿が次期教皇に選ばれる可能性に10万ドルを投じたほか、サム・バンクマン・フリードに禁錮25年が言い渡されるとの予測でも利益を得たとされる。
また、エンジニアのスターリング・クリスピンは、スポーツ以外の全市場で「No」のみを購入する自動売買ボットを構築し、73.4%の勝率を記録したという。ブテリン氏は、こうした事例が予測市場における人間の非合理性の根強さを示しているとみている。
ブテリン氏は、問題点の指摘にとどまらず、予測市場の活用法としてヘッジ戦略も提起した。予測市場を単なる投機の場ではなく、保有資産の値下がりリスクを相殺する保険のように使うべきだという考え方だ。例えば、特定政党の政権獲得が保有株の下落要因になると見込む場合、その政党の勝利に賭けることで株価下落分を補うといった使い方を挙げた。
同氏は、こうしたヘッジ需要が増えれば、より洗練された資本が市場に流入し、健全な金融エコシステムの基盤になり得ると説明した。利用者が資産価格の変動リスクを能動的に管理できるようになる点にも意義があるとした。
さらにブテリン氏は、この発想を拡張した先に、法定通貨への依存を弱める可能性があるとも述べた。AIが利用者の将来の支出パターンを分析し、食費や家賃など生活コストの変動を相殺できるよう、個別に設計したポジションを保有させるモデルを想定しているという。これが実現すれば、利用者はEthereumのような資産で価値を蓄えつつ、ヘッジによって生活費変動リスクを抑え、ドルなど法定通貨への依存を減らした分散型経済に近づくとした。
なお、スターリング・クリスピンは自身のボットについて、スポーツ以外のPolymarket市場で自動的に「No」を買い、清算まで保有する仕組みだと紹介している。全市場の73.4%が「No」で終わるのであれば、未来を予測しようと考え過ぎる必要はない、というのがその主張だ。