暗号資産法案を巡っては、技術設計に加え利益相反防止の扱いが新たな争点となっている。写真=Shutterstock

米国の暗号資産規制法案「クラリティ法案」を巡り、上院審議が再び停滞する可能性が出てきた。新たな火種となっているのは倫理条項で、年内成立への期待は残るものの、先行きは不透明さを増している。

ブロックチェーンメディアのThe Blockが27日(現地時間)に報じたところによると、共和党のトム・ティリス上院議員は、法案に倫理関連の規定が盛り込まれなければ反対する意向を示した。ティリス氏は上院銀行委員会に所属し、法案交渉の中核を担ってきたことから、その発言は審議の行方に直接影響する可能性がある。

ティリス氏はインタビューで、法案が上院を通過する前に倫理条項を明記すべきだと主張した。条項が盛り込まれなければ、賛成から反対に回る可能性があるとも強調した。これにより、これまで主な論点だったステーブルコインの収益構造に加え、倫理規定が新たな争点として浮上した格好だ。

ワシントン政界では、この問題が特定の利害関係と結び付いているとの見方も出ている。投資銀行TD Cowenのマネージングディレクター、ジャレット・セイバーグ氏はメモで、問題となっている倫理条項がドナルド・トランプ氏一族に関連する事業に影響する可能性があると指摘した。あわせて、ティリス氏がこの問題で譲歩する可能性は低いとの見方を示した。

ティリス氏の影響力は、すでに審議日程にも及んでいる。最近では、同氏が上院銀行委員会の幹部に対し、法案審議を5月に先送りするよう求めたという。ステーブルコインを巡る主要論点でも交渉を主導してきた経緯があり、セイバーグ氏は「ティリス氏は法案の将来に極めて大きな影響力を持つ」と分析。今回の発言は、その影響力を実際に行使する構えを示したものだとした。

市場では、法案が年内に成立するとの期待もなお残っている。暗号資産業界の政治的影響力が増しているほか、共和党も米国を世界のデジタル資産の中心地にする構想を掲げているためだ。ただ、TD Cowenは、こうした期待がある一方で実際の可決可能性については慎重な見方を維持している。

最大のハードルは、倫理条項そのものの設計が容易ではない点にある。次期大統領の就任後から規定を適用する形にすれば、トランプ氏一族の現在の事業への影響を抑えられる可能性がある。しかし、この方式は民主党やティリス氏に受け入れられにくい公算が大きいとセイバーグ氏はみる。逆に、現在の事業上の利害関係まで制限する内容であれば、トランプ氏側が受け入れにくい可能性がある。

政治日程も交渉の変数となる。ティリス氏は再選を目指さない予定とされ、トランプ氏と歩調を合わせる政治的圧力は相対的に小さい。このため、利益相反防止を重視する方向で交渉を主導する可能性が高いとの見方が出ている。

倫理条項を巡る対立により、クラリティ法案は単なる産業規制法案にとどまらず、政治的利害が絡む難しい交渉案件となりつつある。5月以降に再開される上院での議論では、どの水準の倫理基準で合意できるかが、法案審議のスピードを左右する重要な焦点となりそうだ。

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