eCashを巡る論争は、ビットコインの拡張手法を巡る長年の議論を改めて浮き彫りにしている。写真=Shutterstock

ビットコインのハードフォーク計画「eCash」が、サトシ・ナカモトの初期採掘分とみられる一部を新チェーン上で再配分する方針を示し、立ち上げ前から波紋を広げている。開発側は既存のビットコイン残高に影響はないと説明しているが、初期配分の妥当性を疑問視する声が出ている。

ブロックチェーンメディアのThe Blockによると、LayerTwo Labsの創業者兼CEOであるポール・ストローツ氏は27日(現地時間)、ビットコインの取引履歴を引き継ぐ新チェーンを構築し、既存のビットコイン保有者に同量のトークンを付与する計画を明らかにした。既存チェーンを複製し、別のネットワークとして運用する点では、Bitcoin Cashなどこれまでのハードフォークに近い。

一方で、今回の構想は単なる仕様変更ではなく、機能拡張の検証に主眼を置く。ストローツ氏は、「ドライブチェーン」と呼ばれるBIP300・BIP301の提案者として知られ、ビットコインと複数のサイドチェーンを連携させることで拡張性を高める構想を訴えてきた。eCashは、その仕組みを実際のネットワークで検証するための取り組みと位置付けられている。

論争の中心にあるのは、初期トークンの配分方法だ。ストローツ氏は、いわゆる「パトシ・パターン」の分析を根拠に、サトシが採掘したと推定される約110万BTCの一部に相当する分をeCash上で再配分する考えを示した。構想では、サトシ側に60万eCashを割り当て、残る50万eCashは新たなエコシステムの基金に振り向けるとしている。

同氏は、これは立ち上げ初期の担い手を確保するための措置だと説明する。フォーク型のプロジェクトでは、初期段階で貢献者や参加者を十分に集められず停滞する「ゾンビプロジェクト」の問題が起きやすく、それを避ける狙いがあるという。ただ、具体的な配分基準は現時点で示されていない。

批判が強まる中、ストローツ氏は、既存のビットコイン資産を動かすものではないと強調した。同氏は「サトシのビットコインを移すのではなく、新チェーン上で別のトークンを割り当てる」と説明し、元のチェーン上の残高はそのまま維持されると述べた。あわせて、初期に採掘されたコインの相当部分が長期間動いていない可能性にも言及した。

それでも市場では、新チェーン上での配分の正当性に疑問を投げかける声が出ている。eCashはビットコインそのものを移転する仕組みではないものの、既存チェーンの履歴と保有構造を前提に設計される。このため、初期配分のあり方がプロジェクトへの信頼を左右しかねないとの見方がある。とりわけ、象徴性の高いサトシ推定保有分を開発主体の判断で調整する手法は、今後の参加者流入にも影響する可能性がある。

eCashは8月のリリースを目標としている。ただ、技術実装そのものよりも先に、初期配分を巡る議論がプロジェクトの行方を占う材料になりそうだ。ドライブチェーン構想の検証という本来の狙いを維持できるのか、それとも配分問題が足かせとなるのかが注目される。

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