ハ・ヨンホCDO。写真=Deable

Deableのハ・ヨンホ最高データ責任者(CDO)は、AI時代に人間が価値を発揮するには、実行をAIエージェントに任せ、判断に充てる時間を増やすことが重要だとの考えを示した。会議録やメッセージ、業務ツールを連携して自らの「AIペルソナ」も構築しており、運用コストは月40万ウォン前後だという。

ハ・ヨンホCDOは取材に対し、「AI時代に人が担うのは、選択と嗜好、そして責任だ。実行をすべてエージェントに渡してこそ、人は1日を判断に使える」と述べた。

同氏は、AIエージェントを活用して個人の競争力を高める鍵は、判断に使える時間をどこまで増やせるかにあると強調する。「実務担当者が1日8時間のうち、自分で判断する時間が20〜30分程度だとすれば、意思決定者は6時間を選択に使う。AI時代は、判断に投じる時間を増やすことが個人の生存に直結する。高度なエージェントを運用できる力を身につけ、判断と選択に集中すべきだ」と語った。

ハ・ヨンホCDOはTmaxSoft、KTH、Kakaoなどを経て、20年以上にわたりデータ・AI分野に携わってきた。大規模検索エンジンやデータ処理システムの開発をはじめ、金融クオンツ、クラウドインフラ、AI推薦アルゴリズムまで幅広い領域を経験している。現在はDeableで推薦・広告エンジン全般を統括するほか、大統領直属の国家人工知能戦略委員会の委員も務める。

そのハ・ヨンホCDOは、すでに複数のAIエージェントを実務に組み込んでいる。自ら構築したエージェントは、単純な業務自動化にとどまらないという。

具体的には、すべての会議を録音して自動で文字起こしし、声紋分析によって自分の発言だけを抽出。数年分の議事録を一元的なデータ基盤に蓄積し、Telegram、KakaoTalk、Slack、Jira、Notion、カレンダー、ドライブとも連携させた。

こうして集めたデータを学習させ、行動パターンや思考パターン、嗜好、深層心理まで分析する「AIペルソナ」を作ったとしている。

ハ・ヨンホCDOは、エージェントの判断と自らの選択が一致しているかを定期的に確認し、随時修正している。「バットを削る老人のように、毎日少しずつ直している」と話す。

難しい判断が必要な場面では、Claude、Codex、Geminiの3つのモデルがそれぞれ「ヨンホならどうするか」を提示し、互いの主張を踏まえて収束させた結果だけが本人に届く仕組みだという。

この仕組みによって、日常生活のかなりの部分もエージェントで処理している。ハ・ヨンホCDOは「社内カフェの注文も、エージェントがWebを開いてログインし、決済まで済ませる」と説明した。

自宅でも、寝室の二酸化炭素濃度が一定水準を超えればカーテンを開ける、窓を閉めるといった操作が可能だという。Telegramで食事の誘いが届いた場合も、「カレンダーに追加して」と指示するだけで済むとしている。

AIエージェントの運用コストは月40万ウォン前後。「Mac mini 1台と、月額200ドルのClaude Codeアカウント1つで運用している」と述べた。細かな実行は低価格帯のHaikuやSonnetを使い、高度な判断や討論にはOpusを充てているという。

一方で、高度なエージェントを構築するには、システムそのものをAI前提で設計し直す必要があると指摘する。

ハ・ヨンホCDOは「使うツール、ワークフロー、資料は、最初からAIが使う前提で作っておくことが核心だ。会社のあらゆるツールの最終ユーザーはAIだ」と語った。

AIが使いやすいようにシステムが再編されているかどうかを見れば、その企業が本当にAIトランスフォーメーション(AX)を進めているかが分かるとも述べた。

また、「AIネイティブ企業」を見極める基準も、最終的には仕事の主体が誰なのかにあるとの見方を示した。

ハ・ヨンホCDOは、ブロックチェーン分野に特化したVCのHashedでアドバイザーも務めており、「1人ユニコーン」を志向するAIネイティブ起業家を支援している。投資の現場では「人が4人を超えると多すぎる」といった声も出ているという。

同氏は「彼らは、もはや人が働くことを前提にしていない。退勤後に仕事が回らなくなる会社は、旧石器時代の会社だ」と語る。

意思決定の方法やスピードの面でも、既存企業が追随しにくい水準に達しているという。ハ・ヨンホCDOは「AIネイティブの起業家と話すと驚くことが多い」と話した。

例えば、継続利用データに基づくパーソナライズ施策の必要性を説明している最中も、相手はキーボードを打ち続けていた。会話が終わると画面を見せてきたが、それは保有する実データで既に動かしている配信システムで、モックではなく実サービスだったという。

一般的な企業なら、社内会議を何度か開き、1カ月後にようやく形になるようなものを、その場で実装し、すぐサービスとして投入していたと振り返った。

もっとも、ハ・ヨンホCDOは人間に固有の領域は残るとの立場も示す。「選択・嗜好・責任の3つを持つ人は、AIに代替されない」と述べた。

AIが最適な選択肢を提示できたとしても、最終的にどれを選ぶかは人間の役割だという。「最適ではない選択でも、嗜好は正しい選択を導く。『AIがこう言った』ではなく、どのツールを使ったとしても結果に責任を持つことが重要だ」と語った。

ハ・ヨンホCDOが身を置くデータソリューション業界でも、AIによる高度化が重要テーマになっている。Deableは、ファーストパーティデータとAIを組み合わせることで、性別や年齢の分類を超え、時間帯や位置情報、直近の行動履歴などを反映した高精度な広告サービスを提供している。

ハ・ヨンホCDOは「男性20代ならこれが好きだろう、というところまでは従来でもできる。しかし、その人が朝7時に地下鉄にいて、直前にゲーム画面を見ていたとしたらどうか。高い複雑性の中で何を好むのかを見つけるためにAIを使う」と説明した。

AIの収益化においても、広告は依然として重要だとの認識を示した。「YouTube、Instagram、Meta、OpenAIでさえ、結局は広告で稼いでいる。AIが収益を生む方法は、何十年たっても広告だ」と述べた。

今後5年で、一般ユーザーも数十のエージェントを持つようになるとみている。ハ・ヨンホCDOは「執事エージェントがその下に多くのエージェントを従え、私は執事とだけコミュニケーションするようになるだろう」と語った。

そのうえで、「今は勉強しなければこうした仕組みを持てないが、5年後にはお金を払うだけで済むだろう」と予測した。

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