母語ではない言語で会話を聞くと、同じやり取りでも相手の言葉をより冷たく、無礼に受け取りやすい可能性があることが分かった。
Gigazineが26日(現地時間)、ScienceDirect掲載論文やThe Conversationの内容を基に伝えた。言語学者のイリニ・マブロウ氏の研究チームは、英語母語話者と、英語を外国語として使うスペイン語母語話者を比較し、こうした傾向を確認したという。
調査は、英語母語話者55人と、英語を外国語として使うスペイン語母語話者45人を対象に実施した。参加者は、職場での英語の会話を収めた動画クリップを視聴し、その場面をどの程度無礼だと感じたか、どのような感情を抱いたかを答えた。
動画は、ヨット乗組員の人間関係を描く米リアリティー番組「Below Deck」と、そのスピンオフ作品から抜粋したものを使った。
その結果、英語を外国語として使う参加者は、同じ場面でも母語話者より無礼だと評価する傾向がみられた。研究チームは、会話に含まれる無礼さを実際以上に強く受け止めた可能性があるとみている。
背景には、単語の意味の理解だけでは説明できない要素がある。動画には罵倒語や緊張を伴うやり取りが含まれていたが、母語話者はその場の関係性や状況を踏まえ、冗談、いら立ち、対立といった違いをある程度切り分けて受け止められる。
一方、外国語話者は、口調の微妙な違いや人間関係のニュアンスを十分に読み取りにくく、同じ表現をより攻撃的に解釈した可能性があるという。
研究チームは、認知的負荷も大きな要因だと指摘する。母語ではない言語で会話を処理する際は、理解そのものに負担がかかるため、表情や身ぶりといった非言語情報に敏感に反応し、緊張や対立の兆候を強く読み取った可能性があるとしている。
ただ、感情反応そのものに大きな差は見られなかった。研究チームは「第2言語を使うと感情が弱まるという見方もあるが、今回の調査では両者は同程度の感情反応を示した」と説明した。
これは、「外国語で聞く言葉は感情的に響きにくい」という通念とは異なる結果だ。
特に、誰かが無礼な扱いを受けたり、尊厳や利益が軽視されたりする場面では、感情反応が強まる傾向があった。いじめや性差別、抑圧が認識される状況で顕著だったという。
発話内容そのものだけでなく、誰が誰にどういう態度で話しているのかといった関係性や力関係も、評価を左右した形だ。
こうした結果を踏まえ、研究チームは言語教育の焦点を文法や語彙だけにとどめるべきではないと指摘する。「何が無礼に当たるのかを理解するには、単語を知っているだけでは不十分で、文脈の中の感情的な手がかりを読むことも重要だ」とし、身ぶりや口調のニュアンスがどう解釈されるのかをより明示的に教えることで、誤解を減らせるとした。
また、文化差も重要な要素として挙げた。東アジアの一部文化圏では直接的な表現を避ける傾向がある一方、ロシアのように直接性を率直で礼儀正しい態度と受け止める地域もあるという。研究チームは、誤解を減らすには文化的背景への理解を広げる過程も欠かせないとしている。
今回の結果は、外国語でのコミュニケーションで生じる違和感が、語彙力の不足や聞き取りの失敗だけでは説明できないことを示している。外国語を理解するとは、単語や文法だけでなく、口調や表情、関係性、文化的基準まで読み取る作業でもあり、教育現場でも実際の会話の中で無礼さがどう認識されるかを扱う必要があることを示唆している。