テスラ車に搭載されたxAIのAIチャットボット「Grok」を巡り、走行中の会話が運転者の注意をそぐ恐れがあるとの懸念が浮上している。CNBCが25日(現地時間)、ニューヨーク近郊でテスラのModel Yのオーナーに同乗取材した結果として報じた。
Grokは現在ベータ版として提供されており、音声コマンドでナビゲーションを操作したり、各種の質問に答えたりできる。テスラは2025年7月から、この機能を車両向けに順次展開している。
車内AIの導入は業界全体で広がっている。Volvo、Rivian、Mercedes-Benz、BMWなどの主要自動車メーカーも、車載AIの採用を進めている。
一方で、スマートフォン操作を減らす代替手段として期待される車内AIが、新たな注意散漫を招く可能性も指摘されている。Carnegie Mellon Universityで自動運転の安全性を研究するフィリップ・クープマン氏は、「運転中に道路状況と無関係なチャットボットとの会話を続けるのは、明らかな妨げだ」とした上で、「運転は常に最優先でなければならない」と述べた。
実際の利用者からも、利便性と危険性の両面を指摘する声が出ている。数カ月にわたってGrokを使ってきたマイク・ネルソン氏は、移動中に音楽やポッドキャストの代わりとして質問を投げかける使い方をしていると説明。その一方で、運転体験を変えるほど便利だと評価しつつも、依然として危険性は高いと話した。
こうした懸念は、テスラの部分自動化機能「完全自動運転」(監督型)と併用した場合に、さらに強まる可能性がある。同機能は、運転者が道路を継続的に監視し、必要に応じて直ちに介入することを前提としているためだ。
CNBCによると、実際の走行では運転者がGrokとの会話に意識を取られ、道路状況への注意が十分でない場面も確認されたという。
機能面では、正確性や一貫性にも課題が見られた。同じ質問に異なる回答を返したり、ナビゲーション案内が実際の走行ルートと食い違ったりする場面があり、走行中の混乱につながる要因になり得ると指摘された。
コンテンツの安全性も論点となっている。車載版Grokは、呼びかけに対して話者を問わず反応し得る仕様で、成人向けの会話が可能なモードも含まれるとされる。未成年による利用をどう制御するかが課題として浮上している。
このほか、テスラの「完全自動運転」機能は、複数の事故との関連で米規制当局の調査対象となっている。専門家は、AIが運転者に道路状況への注意を促す設計であれば安全性の向上に寄与し得る一方、現状のように走行と無関係な会話を中心とする構造では、かえってリスクを高める可能性があるとみている。
車載AIの普及は今後さらに進む見通しだ。今回の事例は、チャットボット型の車載機能に対して、利便性だけでなく、運転安全、応答精度、未成年保護といった複数の基準を同時に満たすことが求められることを示している。