NVIDIAは、OpenAIのGPT-5.5をベースとする「Codex」を全社導入し、1万人を超える社員が利用を始めた。Blackwellシステム上で運用することで、コストをGPT-4o比で35分の1に圧縮し、1MW当たりのトークン出力を50倍に高めたという。TechRadarが24日(現地時間)に報じた。
今回の導入は、一般的な社内向けチャットボットの展開とは一線を画す。Codexはこれまでコーディング支援ツールとして知られてきたが、現在は製品、法務、マーケティング、財務、営業、人事、運用など非技術部門にも対象を広げ、実務を担うAIエージェントへと役割を拡大している。NVIDIAはこれを、AIネイティブな企業環境における導入事例として位置付けている。
基盤となるのは、NVIDIAのGB200 NVL72システムだ。Codexはこの構成上で稼働しており、同社は大幅なコスト削減とトークン処理能力の引き上げを実現したと説明する。単純なQ&Aにとどまらず、実際の企業業務を処理できる水準まで運用効率を高めた点を強調した。
社内での評価も高い。NVIDIAによると、社員からはCodexの出力について「驚異的だ」「人生が変わるレベルだ」といった声が上がっている。ブログでは、「これまで数日かかっていたデバッグのサイクルが数時間で終わるようになった」「数週間を要した複雑なマルチファイルのコードベース実験が、一晩で可能になった」と紹介した。
自然言語のプロンプトだけで、エンドツーエンドの機能を実装・展開するチームも増えているという。従来モデルに比べて信頼性が高まり、手戻りや無駄な作業も減ったとしている。
ジェンスン・フアンCEOは導入の狙いについて、「チャットボットは質問に答えるが、エージェントは仕事をする」と説明した。Codexを単なる対話型AIではなく、実務を直接処理する企業向けツールとして位置付けていることを示した発言だ。
サム・アルトマンCEOも期待を示した。X(旧Twitter)で共有されたフアン氏のメールによると、フアン氏はCodexについて、利用者の業務を加速し、これまで不可能だった作業を可能にすると評価したうえで、GPTが推論、計画、ツール利用へと進む足掛かりになったとの見方を示した。
今回の事例は、企業向けAIの競争軸がモデル性能そのものから、実業務の自動化や運用コストの削減へ移りつつあることを示している。NVIDIAは、Codexがセキュリティを確保したクラウドのサンドボックス環境で、実際の社内データを扱えると説明。社員がチャットボットと対話する段階を超え、ワークフロー全体を安全に自動化するAIエージェントを活用できるとしている。
こうした流れのなか、OpenAIとAnthropicの競争も激しさを増している。AnthropicのClaude Mythosがサイバーセキュリティ分野で注目を集める一方、Codexは企業データや業務フローと接続し、非技術部門を含む組織全体の自動化に軸足を置く点が特徴だ。
焦点は、こうした成果がNVIDIA社内にとどまらず、他の大企業にも広がるかどうかにある。NVIDIAが示したコスト削減効果と電力当たりの生産性向上が維持されれば、企業が生成AIを実証実験の段階ではなく、常時運用の仕組みに組み込む動きは一段と強まる可能性がある。
フアン氏はX上で、「NVIDIAと新たな取り組みとして、Codexを全社展開した。実際に動くのを見られて素晴らしかった。自社でも試したいなら知らせてほしい」と呼びかけた。