Tesla「Model S」 写真=Shutterstock

Teslaの高級EVセダン「Model S」が、生産終了に向かっている。1車種の終売にとどまらず、EV時代の幕開けを象徴したモデルの退場として注目を集めている。

EV専門メディアのInsideEVsは25日(現地時間)、Model Sは高級EVセダンの枠を超え、EV市場だけでなく自動車業界全体における消費者の基準を変えた車種だと報じた。

Model Sの意義は、登場時から明確だった。2012年に発売された初期モデルは85kWhのバッテリーを搭載し、米環境保護庁(EPA)基準で最大265マイル(約426km)の航続距離を実現した。

これは当時のホンダ・フィットEVの123マイル、日産リーフの73マイルを大きく上回る水準だった。EVが都市部の近距離移動向けにとどまらず、長距離移動にも使えることを初めて明確に示したモデルと評価されている。

もっとも、当時は充電インフラが十分に整っていなかった。2012年初めの米国では充電器の設置は数千基規模に達していたものの、多くは普通充電に近く、長距離走行では長時間の充電が避けられなかった。

実際、初期ユーザーの間では、充電可能な宿泊施設を確保するため、事前に複数の施設へ問い合わせる必要があったとされる。

現在販売されているModel Sは、基本的な外観こそ維持しているものの、中身は大きく変わった。バッテリー、電子機器、駆動系、内装、安全装備に至るまで改良が重ねられ、性能も大幅に引き上げられた。

Teslaは従来型のフルモデルチェンジではなく、継続的な改良によって同一モデルを長期にわたり進化させる手法を採ってきた。

生産面でも変化は大きい。部品点数は初期の約5000点から最新モデルでは約3000点に減少したとされ、初期型と現行型で共通する要素は3%程度にとどまるという。同じ車名を維持しながら、実質的には別の車へと進化してきた格好だ。

Model Sが業界に与えた影響も大きい。フラッシュドアハンドル、大型タッチスクリーン、無線ソフトウェア更新(OTA)といった要素は、その後の世界の自動車産業で広く標準機能として定着した。

とりわけ、EVが規制対応のための車ではなく、高性能で魅力ある主力商品になり得ることを示した点は大きい。

もちろん、初期モデルには完成度や品質を巡る論争もあった。それでもModel Sは、EVに限らず新車全般に対する消費者の期待水準を引き上げた転機として位置付けられている。

今回の生産終了は、単なる車種整理にとどまらず、Teslaの戦略転換を示すシグナルとも受け止められる。Model Sで始まったソフトウェア主導の車両開発と継続的な機能更新の手法は、すでに他車種や業界全体へ広がっている。

Model Sは市場の第一線から退くことになるが、この車が促したEVの進化と自動車産業の変化は、いまも続いている。

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