OpenAIとAnthropicが、既存の企業向けソフトウエア業界で中核を担ってきた人材の採用を相次いで進めている。AI企業の競争は製品開発だけでなく、人材市場にも波及してきた格好だ。
ブロックチェーン系メディアのCryptopolitanが26日付で報じたところによると、OpenAIはSalesforceやPalantir Technologiesで法人営業や顧客対応を担ってきた人材の獲得を積極化している。
象徴的な事例がデニス・ドレッサー氏だ。SlackでCEOを務めた同氏は、現在はOpenAIで最高収益責任者(CRO)を務める。Salesforce出身のジェニファー・マズレシ氏も最近OpenAIに加わり、市場開拓を統括している。同氏は参加理由について、「製品への信頼があるため」と説明し、AI技術の実用性に強い手応えを示した。
AnthropicもSalesforce出身者を採用したとされる。OpenAIについてはこれに加え、Palantir Technologiesのフォワード・デプロイメント・エンジニア(FDE)の採用も進めていると報じられた。FDEは顧客の業務プロセスをソフトウエアに落とし込む現場密着型の職種で、企業向け市場では専門性の高い人材とされる。
こうした採用の動きは、AI業界で求められる人材像の変化を映している。これまで中心だった研究人材の確保に加え、今後は大企業顧客の開拓や既存取引のAIサービスへの転換を担う営業・導入人材の重要性が一段と高まりそうだ。
OpenAIの事業構造の変化も、この流れを裏付ける。サラ・フライヤー氏(CFO)は今年初め、企業顧客が事業全体の最大4割を占めており、年末には5割水準まで拡大する可能性があると明らかにした。OpenAIはすでに100万社の企業顧客を抱えるという。
市場では、こうした動きを既存ソフトウエア業界への圧力の強まりと受け止める見方が広がっている。AI拡大への警戒感を背景に、伝統的なソフトウエア企業の株価は軟調に推移しており、投資家が関連銘柄の組み入れ比率を引き下げる動きも出ている。
次の焦点は、OpenAIがどこまで既存ソフトウエアの領域に踏み込むかだ。OpenAIは単なる競合にとどまらず、既存ソフトウエアを代替する戦略を強めている。自律型エージェントシステム「フロンティア」や、複数のアプリケーションをまたいで業務を処理する「オペレーター」がその例として挙がる。
さらに、McKinsey、Boston Consulting Group(BCG)、Accentureとともに「フロンティア・アライアンス」を立ち上げ、大企業の業務をAIエージェント中心に転換する構想も打ち出した。
これに対し、既存企業も防戦を強める。ServiceNow、Palantir Technologies、CrowdStrikeは、AIエージェントの運用には自社のインフラやガバナンスが不可欠だと主張し、競争優位性を訴えている。
雇用市場にも変化は及んでいる。OracleはAIクラウドに資源を振り向ける一方で、数千人規模の人員削減に着手した。MetaやMicrosoftも最近、人員削減に踏み切っている。
AI企業による人材吸収は、単なる転職市場の動きにはとどまらない。企業向けソフトウエア市場の主導権がどこへ移るのかを示す兆候であり、AIが製品競争を超えて組織や人員構造の再編にまで影響を及ぼし始めたことを映している。