中国・深センのハードウェア大手DJIとInsta360の競争が、ドローンや360度カメラにとどまらず、Vlogカメラへも広がっている。両社は製品領域の拡大に加え、価格戦略や人材獲得、特許訴訟でも火花を散らしており、米国の規制動向も含めて世界のスマートイメージング市場を左右する構図が強まっている。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は4月24日付で、両社の対立が製品競争にとどまらず、多方面に広がっていると報じた。影響は米国の競合企業だけでなく、グローバル市場全体に及びつつあるという。
競争が新たな局面に入ったきっかけは、Insta360のドローン市場参入だ。Insta360は昨年7月、独立ブランド「Antigravity」を通じて360度ドローン市場に参入した。
これに対し、DJIはパノラマ映像カメラで対抗した。両社がそれぞれ相手の主力分野に踏み込む展開となっている。
市場シェアでは、なおDJIが優位に立つ。民生用ドローン市場では世界シェア約70%を確保している。
一方、AntigravityのA1ドローンは発売後48時間で売上高3000万元を記録し、発売初月の世界出荷台数も3万台を超えた。立ち上がりは順調だったが、業界では、この実績だけで短期間のうちにDJIの支配力を揺るがすのは難しいとの見方が出ている。
360度カメラ市場では、構図が逆になる。DJIの「Osmo 360」は四半期ベースでシェア35%を記録したのに対し、Insta360は通年ベースで65%のシェアを維持し、首位を守った。
専門家の間では、両社製品ともなお技術的な改善余地が大きく、最終的な勝敗は製品競争力が左右するとの見方が出ている。
一方で、この競争は単純な消耗戦にはならないとの分析もある。製品改良のスピードが新たな需要を生み、価格競争が市場拡大を後押ししているためだ。
業界では、産業全体の成長を促す典型的な高強度競争の事例として評価する声が上がっている。
米国の規制は、両社に共通する不確実要因でもある。米連邦通信委員会(FCC)は国家安全保障を理由に、外国製ドローンとその部品を規制対象に含めており、事実上、DJIの新製品の米国内販売を制限している。
DJIはこれに反発し、提訴に踏み切った。Insta360についても、一部製品が規制対象となる可能性があり、同社は政策動向を注視している。
こうした不確実性は、新製品の投入にも影響を及ぼしている。DJIが最近公開したVlogカメラは、米国ではまだ販売されていない。
一方、Insta360はLeicaと共同開発した新型ハンドヘルドカメラ「Luna」の投入準備を進めている。
ハンドヘルドカメラ市場でも、DJIの優位は続く。DJIは2025年、この市場でシェア62%を確保して首位に立ち、出荷台数も前年から大きく伸ばした。
これに対し、Insta360はシェア20%で続いた。GoProは出荷減少に伴ってシェアを11%まで落とし、最近では人員削減計画も公表している。
中国国内では、こうした競争が産業全体の成長を促しているとの評価が出ている。ドローン登録数が急増するなか、360度ドローンのような新カテゴリーが既存市場を押し広げているとの見方だ。
その一方で、競争激化に伴って法的紛争も本格化している。DJIはInsta360を相手取り、ドローン技術を巡る特許侵害訴訟を起こしており、結果次第ではInsta360のグローバル事業に影響が及ぶ可能性がある。
Insta360も米国で、GoProとデザインを巡る紛争を抱えている。
DJI創業者のワン・タオ(Wang Tao)氏は最近のインタビューで、「競争は相手を倒すための戦いではなく、より速く走るためのレースだ」と語った。
DJIとInsta360の競争は、単なるシェア争いを超え、ドローンとスマートカメラ市場全体の拡大につながっている。もっとも、その行方は米規制と特許訴訟という外部要因にも左右されそうだ。