Adam Back氏(写真=Blockstream)

Bitcoinの初期開発者として知られるAdam Back氏は26日、サトシ・ナカモトの保有BTCや正体を巡るドキュメンタリーの主張に反論した。初期の採掘データからサトシの保有量や未売却の有無、さらには人物まで特定できるとする見方について、用いられた「パトシ・パターン」には大きな限界があると指摘している。

BeInCryptoなどによると、Back氏はX(旧Twitter)への投稿で、初期Bitcoinの採掘データの解釈や、そこからサトシの保有量を推定する手法に疑義を示した。問題の中心となっているのは、サトシがBitcoin開始後の最初の1年間に全ブロックの約20〜40%を採掘し、50万〜100万BTCを保有したまま一度も売却していないとする見方だ。ドキュメンタリーはこの前提を踏まえ、サトシがすでに死亡している可能性にも言及していた。

これに対しBack氏は、前提そのものが成り立たない可能性が高いと主張した。Bitcoin公開初期の時点でも、すでに多くの採掘参加者が存在し、ハッシュレートベースでは全体の60〜80%以上を占めていた可能性があるという。

初期ネットワークへの参加者が増えるほど、どのブロックを誰が採掘したのかを事後的に切り分けるのは難しくなる。Back氏は、統計的なパターン分析だけでサトシの採掘分を精密に識別するのには限界があるとの見方を示した。

Back氏はまた、「サトシが一度も売っていない」とする前提についても、立証されていないと指摘した。仮にパトシ・パターンによって初期の一部採掘分を識別できたとしても、それが現在まで未移動のまま残っていることの証明にはならないという。

さらに、サトシが一部を売却していた場合、より最近で識別しにくいコインから先に処分した可能性があるとも述べた。時間の経過とともにパターンはノイズに埋もれ、識別は一段と難しくなるため、後期の採掘分が動いていても現在の分析だけでは確認しにくいとの見方だ。

人物特定のプロセスに対しても批判を強めた。Back氏は、ジェイムソン・ロップによる既存分析に触れ、ハル・フィニーについては、Bitcoinのテスト取引が行われていた時間帯にマラソンを走っていたことを示す資料がすでに存在すると指摘。ハル・フィニーをサトシとみる仮説とは整合しないとした。

その上で、制作側はその後、候補の軸足をレン・サッサマンへ移したものの、当初の根拠がなぜ誤っていたのかを十分に説明していないと批判した。Back氏はこうした手法を「ゲルマン健忘」と表現し、仮説と食い違う証拠が示されても十分に反映せず、別の候補を次々と付け加えていると問題視した。

フォーラム投稿の分析を通じて欧州時間帯の居住者を除外しておきながら、その後になって時間帯の整合性に疑問が残るサッサマンを候補に挙げた点についても、一貫性を欠くと指摘した。

技術面からも反論した。Back氏は、カム氏、レン・サッサマン氏の配偶者が示してきた説明に言及し、サッサマン氏はC++に通じておらず、Windows端末を所有していたこともなかったと述べた。

Bitcoinの初期コードはC++で記述されているため、この点はサッサマン説の弱点になり得るという。加えて、サッサマン氏が生前、Bitcoinに批判的な立場を示していた点にも触れた。

今回の反論は、サトシの正体を巡る従来の推定が依然として決定的な証拠を欠いていることを改めて浮き彫りにした。初期の採掘記録やブロックのタイムスタンプ分析だけで、保有コインの規模や売却の有無、実在人物の特定までを一挙に結び付けるのは難しいというのがBack氏の立場だ。

ネットワーク参加者が増え、採掘が分散するほど、特定の行為を特定人物に帰属させる作業は曖昧になる。新たな証拠が示されるか、サトシ本人が自ら姿を現さない限り、初期Bitcoinの採掘データだけで結論を下すのは容易ではないとの見方が続きそうだ。

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