写真=Reve AI

大規模言語モデル(LLM)の開発競争が再び熱を帯びてきた。米国と中国の有力AI企業が新モデルを相次いで投入し、リリースの間隔も短くなっている。開発費の増大を受け、もともと厳しいAI企業の採算性がさらに悪化しかねないとの見方も出ている。

OpenAIは新モデル「GPT-5.5」を発表し、ChatGPTの有料ユーザー向けに提供を始めた。GPT-5.4より少ないトークンで、より高速かつ高精度な推論を実現し、企業・個人による先端AIの活用を後押しするとしている。Anthropicも先立って、Opusシリーズの最新モデル「Claude Opus 4.7」を投入した。

中国勢の動きも目立つ。DeepSeekは新モデル「V4」のプレビュー版を公開した。オープンソースでありながら先端モデル級の性能を備え、価格はClaude Opus 4.7やGPT-5.5を大きく下回るとされる。昨年発表した推論モデル「R1」を上回る反響を呼ぶ可能性があるとの評価も出ている。Moonshot AIも、オープンソースLLM「Kimi」シリーズの最新版「Kimi-K2.6」を公表した。

コーディングAI市場では、資本力のある企業を軸に再編の動きが強まっている。イーロン・マスク氏が率いるSpaceXは、AIコーディングのスタートアップCursorについて、年内に600億ドルで買収できるオプションを確保した。

Google DeepMindが、AIコーディングモデルの改善に特化した専任チームを立ち上げたとの報道もある。背景にはAnthropicの存在感の高まりがあるとみられており、Google DeepMindの研究者がAnthropicのコーディングツールをGoogleのGeminiより高く評価しているとの見方も伝えられている。

AIを巡る企業の動きは、クラウドやインフラ分野にも広がっている。Google Cloudは年次イベント「Cloud Next」で、AIとクラウドに関する新施策を相次いで発表した。GoogleはAI学習向けの「TPU 8t」と推論向けの「TPU 8i」を公開したほか、サブスクリプション型の生産性プラットフォーム「Workspace」のAI機能も大幅に拡充した。中核となる「Workspace Intelligence」は、Gmail、Googleカレンダー、Googleチャット、Googleドライブのデータを基に、業務全体の自動化を支援する。

Google Cloudのトーマス・クリアンCEOは、チップ、データセンター、ファウンデーションモデル、製品までを内製する「フルスタック」AI戦略を掲げ、クラウド市場でAmazon Web Services(AWS)との差を縮められるとの認識を示した。

Google Cloudは韓国の大手ITサービス企業との協業も拡大している。「Google Cloud Next 2026」では、Google Cloudとの連携強化を打ち出す韓国企業の発表が相次いだ。

Anthropicはビッグテック各社から相次いで資金を確保している。今月だけでも、AmazonとGoogleから条件付き分を含めて数百億ドル規模の投資を取り付けた。調達資金は、Claudeの需要拡大に対応する計算資源の確保に充てる方針だ。

AIエージェントの普及を受け、AIインフラではGPUだけでなくCPUの重要性も高まっている。推論以外にも、論理処理、ファイル管理、ネットワーク呼び出し、コード実行などでCPUが担う領域が大きいためだ。こうした中、MetaがAI需要を見据え、AWSの独自開発CPU「Graviton」を大規模導入する契約を結んだことが注目を集めた。

企業内で増え続けるAIエージェントを効率的に管理する動きも加速している。ビッグテック各社はそれぞれ異なるアプローチで、AIエージェントの管理やガバナンス強化に取り組んでいる。

Adobeは、企業のデジタルマーケティング業務などの自動化を支援するAIエージェント基盤「CX Enterprise」を公開した。AI主導で変化するソフトウェア市場への対応を急ぐ狙いがある。

OracleはGoogle Cloudとの協業を強化し、自然言語でデータベースを照会できる「Oracle AI Database Agent」を披露した。TencentはOpenClawベースのAIエージェント「QClaw」のグローバル版を投入した。データクラウド大手のSnowflakeも「Snowflake Intelligence」と「Cortex Code」を更新し、Snowflake Intelligenceについて、企業データへの質問を通じてビジネスインサイトを引き出す文脈認識型のAIエージェントだと説明している。

再編の動きは地域をまたいで広がる。カナダのAI企業CohereとドイツのAI企業Aleph Alphaが合併するとの報道が浮上した。Aleph Alphaは一時、「ドイツ版OpenAI」として注目を集めたが、ChatGPT型の大規模言語モデル開発から軸足を移し、企業向けに特化したAIアプリケーションへと戦略を転換している。Cohereも同様の方向性を掲げる。顧客サービス向けAIエージェントのスタートアップSierraは、フランスのスタートアップFragmentを買収した。Fragmentは企業の業務フローへのAI統合を支援している。

このほか、エージェント型AIのスタートアップForthTwoMorrowは、陸軍軍需司令部と国防軍需分野のAI転換に向けた協力に乗り出した。SK AXは今後7年間、Daishin SecuritiesのIT運用全般を統合管理し、AIエージェントによる金融インフラ運用を段階的に拡大する。Hancomは、利用者の業務パターンを複製して生産性向上を支援する「ツイン型エージェントOS」を年内に商用化する計画だ。LG AI ResearchとNVIDIAの経営陣は、「K-EXAONE」エコシステムの拡大に向けて技術協力を強化する方針を確認した。LGのAIモデル「EXAONE」とNVIDIAの「Nemotron」のオープンエコシステムを組み合わせ、専門分野に特化したモデルの共同開発などへ協力範囲を広げる。

独自のAIファウンデーションモデルを手がけるMotif Technologiesは、NVIDIAのソフトウェアツールではなく、自社プラットフォームを前面に打ち出して差別化を図っている。NVIDIAの汎用ツールだけでは、計算資源で優位に立つビッグテックに対抗しにくいとの判断からだ。同社は自社開発ツールを通じて、費用対効果の高いLLMの構築・運用に注力する。MegazoneCloudは、Heerim Architects & Plannersと共同で「建築法規検討AIエージェントシステム」の実証事業を完了した。エンタープライズソフトウェア企業のTmaxSoftは、新たなAI製品群のブランド名を「Continuum AI」に決め、ブランドアイデンティティーを公開した。

Googleは、AI機能を搭載したブラウザ「Gemini in Chrome」の提供を韓国で拡大した。これにより、韓国最大手ポータルNaverのAI対応が本格的な試金石を迎えるとの見方が出ている。

AIが企業向けソフトウェアを置き換えるという、いわゆる「SaaSpocalypse(SaaSの終末)」の見方が広がる一方、既存ソフトウェア企業の反撃も強まっている。有力ソフトウェア企業はAIエージェント基盤を投入するだけでなく、SaaSpocalypse論が抱える限界についても積極的に反論している。

AIエージェントの普及を背景に、従量課金に加え、AIが業務を適切に処理した場合にのみ料金を受け取る「成果連動型」の価格モデルも、企業向けソフトウェア市場で急速に広がっている。

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