5月の大型連休を前に、モビリティ各社がイベントや観光分野への展開を強めている。蓄積した移動データと利用者基盤を生かし、自治体のイベント運営支援や観光客の移動、団体輸送などにつなげることで、新たな収益源の確保を狙う動きだ。対象領域は配車やナビゲーションにとどまらず、現場運営や送客、駐停車の取り締まり通知にまで広がっている。
モビリティ業界では足元、保有データを収益源へ転換するサービスの投入が相次いでいる。5月初旬の大型連休を起点に、春の花見シーズンから夏の祭りやフェスティバルまで、国内の移動需要取り込みを本格化させる構えだ。大規模会場周辺で課題となってきた駐車場不足や交通混雑、取り締まりへの不満、訪日客を含む外国人観光客の団体移動の不便さも、新たな事業機会として浮上している。
TmapMobilityは、自治体のイベント運営にデータ分析を活用する事例を増やしている。2026泰安国際園芸治癒博覧会に「フェス移動AIソリューション」を適用すると発表した。来場者の移動データを基に、混雑区間を踏まえた経路案内や駐車場の分散誘導を支援する。
イベント期間中は、周辺の臨時駐車場の空き情報をリアルタイムで反映し、利用者を案内する。終了後は、来場者の属性や滞在パターンを分析したレポートを自治体に提供する。事前の広報から開催中の移動管理、事後分析までを一体で支援する仕組みだ。TmapMobilityによると、同ソリューションは昨年、春川マラソンや韓国観光公社と連携した内蔵山・順天湾周辺でも導入した。
TmapMobilityのチョン・ヒョノデータビズリーダーは「来場者の移動データを基に現場の混雑を緩和し、事後分析まで支援できる点に意義がある」とコメントした。
利用者接点の強化も進めている。TmapMobilityは最近、ホーム画面を刷新して地図を前面に配置し、ユーザーが飲食店や旅行コースを紹介する「マイテーマコース」コンテンツを公開した。移動データの活用範囲を、目的地探しやソーシャル機能にまで広げる狙いがある。
運賃依存から脱却、移動エコシステム全体へ
業界各社に共通するのは、蓄積した移動データを自治体のイベント運営、コンサートや祭りへの送客、外国人観光客の団体移動、駐停車通知といった外部需要と組み合わせている点だ。運賃収入に依存するモデルから離れ、データそのものを商品化する流れが鮮明になっている。自治体は臨時駐車場の確保や現場要員に頼る従来対応の限界を補え、主催者や観光事業者は送客チャネルと事後分析データを同時に確保できる。
Kakao Mobilityが運営するKakao T Shuttleは、コンサートやフェス需要の取り込みを進める代表例だ。Weverse Con Festival、SHINeeのコンサート、King Gnuの来韓公演、ソウル歌謡大賞、端宗文化祭などでイベントごとのシャトル便を展開してきた。座席数を限定した事前予約方式で、料金はイベントや区間によって2万2000ウォンから5万ウォン程度。コンサートや地域の祭りに加え、マラソンや釣り、小規模な集まりまで、団体移動が発生する幅広い場面をカバーしている。
Socarは2025年9月、行政安全部とKORAILとともに、人口減少地域の活性化に向けた業務協約を締結し、関連割引プログラムを運用している。8月まで、89の人口減少地域にある主要なSocar Zoneの貸出料金を55%割り引くのが柱だ。対象には当該地域内のSocar Zoneに加え、人口減少地域への移動需要が大きい他地域の交通拠点周辺のSocar Zoneも含め、実利用を促している。金海や梁山などの地域訪問に使える55%割引クーポンも別途提供している。
観光客・団体需要の囲い込みが焦点に
外国人観光客の団体移動を見据えた動きもある。Uber Taxiは最近、プレミアム移動サービス「Premier Van」を投入した。最大5人が乗車でき、30インチのスーツケースを4個まで積載できる車両を使い、空港送迎やゴルフ、家族旅行の需要を狙う。事前確定運賃制を採用し、渋滞による運賃変動の負担も抑えた。今後はソウルから提供地域を広げ、外国人需要の高い済州では大型タクシーサービスも追加する予定だ。Uber Taxiは「観光客を中心に、団体移動や積載スペースへの需要が高まっていることを踏まえ、Premier Vanを投入した」と説明している。
利用者側の移動時の不便さに対応するサービスも増えている。こうした機能は、業界にとって利用データを蓄積する手段にもなる。モビリティアプリのWhistleは最近、行楽需要を見込み、蔚山広域市蔚州郡で駐停車取り締まり通知サービスを始めた。観光客の流入が多いエリアのインフラを対象とし、取り締まりCCTV区域に車両が駐車されると、事前通知のSMSを無料で送信して移動を促す。1回の登録で全国の提携地域の通知をまとめて受け取れる点を、土地勘のない旅行者向けの利点として打ち出している。
Whistleは現在、90の自治体と連携して駐停車通知サービスを提供している。運営会社によると、Whistleによる駐停車取り締まり通知は2025年に760万8576件と、前年比26.6%増だった。乗用車の過料4万ウォンで単純計算すると、節減効果は約3043億ウォンに相当するという。累計利用者は587万人、登録車両は554万台に達した。
こうした動きは、モビリティ業界がコスト削減を軸とした単価競争から脱し、移動エコシステム全体を担う事業者へと転換を進める流れの一環とみられる。業界関係者は「大型連休と夏の繁忙期を経て、各社がどの需要層やイベント、観光カテゴリーを先に押さえるかで、移動データ収益化の成否が見えてくる」と話している。