欧州中央銀行(ECB)は、デジタルユーロの基盤に欧州のオープンな決済標準3規格を採用する。ユーロ圏でVisaやMastercardを中心とする国際カードブランドへの依存を減らし、域内独自の決済インフラ整備につなげる狙いがある。BeInCryptoが4月26日に報じた。
ECBは、欧州カード決済協力体(ECPC)、Nexo Standards、Berlin Groupとそれぞれ提携合意を結んだ。デジタルユーロは特定事業者の独自仕様ではなく、オープンな共通基盤として整備する方向だ。欧州の決済事業者は、国際カードブランドのネットワーク利用料に依存せず、この技術基盤を活用できるようになる。
各規格は、決済プロセスごとに役割を分担する。ECPCが開発したCPACEは、NFCを使った非接触決済を担う。
Nexo Standardsは、加盟店システムと決済サービス事業者、アクワイアラーのバックエンドを接続し、店頭決済やATM取引を支える。Berlin Groupの規格は、携帯電話番号などの識別子を使った口座ベースの送金、残高照会、加盟店アプリとの連携に適用される。
ECBは、欧州では決済端末全体をカバーする単一のオープン標準が存在せず、これまで国際カードブランドやデジタルウォレットの独自規格に依存してきたとみている。今回の3規格が導入されれば、各国のカードスキームは既存端末を維持したまま他国市場へ展開しやすくなる。デジタルユーロが制度化されれば、欧州の決済事業者による越境展開も後押しされる可能性がある。
Berlin GroupのAPIフレームワークは、すでに欧州市場の約80%で利用されており、銀行やフィンテックのPSD2対応オープンバンキング基盤として活用されている。ECPCは2020年に、フランス、ドイツ、ベルギー、ブルガリア、スペイン、ポルトガルの決済企業6社が設立した。Nexo Standardsはブリュッセルに本部を置く国際非営利団体だ。
ECBの執行理事会メンバー、ピエロ・チポローネ氏は、今回の合意について、より自由で開かれた決済インフラに向けた一歩だと述べた。一方で、効果が本格化するのは、EUの共同立法機関がデジタルユーロ関連法案を採択した後になるとの見方も示した。
法的な枠組みが整うまでは、これらの標準はあくまで選択肢にとどまり、事業者もユーロ圏全域への展開を前提とした投資判断を下しにくいという。
一方、欧州の主要銀行は、既存の金融プラットフォームに暗号資産取引機能を組み込む動きを強めている。
ベルギー最大の銀行・保険グループKBCは年初、自社のオンライン証券プラットフォーム「Bolero」を通じて、個人投資家向けにビットコインとイーサリアムの取引を始めた。注目されるのは、大手銀行がデジタル資産へのアクセスを開放したこと自体より、その導入手法にある。
KBCは別個の新サービスを立ち上げるのではなく、既存の規制対応プラットフォームと顧客接点の中に、暗号資産取引機能を組み込んだ。
こうした流れは欧州全体に広がっている。直近12カ月では、BBVAがスペインで関連サービスを開始し、ドイツ最大の協同組合金融グループDZ Bankも追随した。Societe Generaleは子会社Forgeを通じて、デジタル資産インフラを構築している。
銀行各社は、デジタル資産機能を既存のコンプライアンス、報告、顧客管理システムに接続している。顧客は株式と同じように既存口座内でビットコインを売買でき、銀行側も同じ運用体制の中で処理できる。
欧州銀行によるデジタル資産競争は、暗号資産取引を導入するかどうかではなく、既存の金融インフラにどれだけ早く実装できるかへと焦点が移りつつある。