スペインのスタートアップNiche Mobilityが、チェーンやギアを使わない電動自転車向けドライブトレイン「ADTS(Advanced Digital Transmission System)」の試作機を公開した。ペダルと後輪を機械的に接続せず、発電した電力でモーターを駆動する「ペダル・バイ・ワイヤ」方式を採用する。
米電動モビリティメディアのElectrekが23日(現地時間)に報じた。
ADTSの最大の特徴は、ペダルと後輪が物理的につながっていない点だ。利用者がペダルをこぐと、チェーンを介して後輪を回す代わりに、モーターユニット内の発電機が電力を生み出す。その電力で別の駆動モーターを駆動させ、後輪を回す仕組みだ。システムの電源がオフの状態では、ペダルをこいでも走行できないという。
同社は、従来の機械式変速機中心の駆動系を、電子制御ベースのドライブトレインへ置き換える構想を掲げる。ギアやチェーンの整備負担を抑えながら、走行状況に応じてギア比を自動で調整する。
走行モードは「イージー」「フロー」「スウェット」などを用意した。手動での変速操作を不要にし、シンプルな操作性を訴求する。
性能面では、ミッドドライブ方式で最大約120Nmのトルクを目指す。航続距離はバッテリー構成によって異なるが、約80~90kmとしている。
速度面では、通常仕様でアシスト上限を時速25kmに設定。時速45kmまで対応する高速仕様も開発中だ。
電子制御を前提とした機能拡張も特徴の1つだ。ブレーキ時だけでなく、下り坂の惰性走行時にも回生制動を利用できるとしている。
ボタン操作やペダルの逆回転による後進機能も備えた。重量のあるカーゴタイプの電動自転車での活用を想定している。
主なターゲット市場は、都市型モビリティ、トレッキング、カーゴ用途の電動自転車だ。複雑な変速操作よりも、使い勝手や保守負担の軽減が重視される分野に適しているとみている。
一方、商用化に向けた課題も残る。人力をいったん電力に変換し、それを再び駆動力に変えるため、エネルギー損失が生じる可能性がある。電子部品が増えることで、コスト増につながる懸念もある。
従来のチェーン式ドライブトレインは、依然として高効率で構造もシンプルだ。こうした点は競争上のハードルとなる。
業界では、高性能スポーツ自転車よりも、初心者向けや通勤用途、貨物輸送向けの市場で有力な代替案になり得るとの見方がある。最終的には、効率と価格をどこまで改善し、電動化ならではの利便性をどこまで訴求できるかが普及の鍵を握りそうだ。