米軍は、中国の宇宙軍事能力の拡大を最大の脅威とみて、宇宙戦力の増強を急いでいる。米空軍は次期会計年度に3388億ドルの予算を要求し、このうち宇宙軍分として711億ドルを計上した。前年比124%増で、宇宙統制や衛星通信、ミサイル警戒、衛星のサイバー防護に重点配分する。
米宇宙軍は、中国が宇宙空間で米国と同盟国を攻撃し得る軍事技術をすでに開発・試験しているとの認識を強めている。こうした脅威認識を背景に、過去最大規模の予算増額に踏み切った。
グレゴリー・ゲグノン氏はオーストラリアのキャンベラで開かれたイベントで、中国が世界最大規模の宇宙戦力を運用しており、その規模は米国の約3倍に達すると述べた。増強ペースについても、「まるで短距離走のような速さだ」と語った。
同氏によると、シー・ジンピン国家主席が政権に就いた2013年当時、中国の軌道上の衛星数は約70基だったが、現在は1400基まで増えたという。「宇宙はもはや補助的な領域ではなく、中核的な戦場だ」とした上で、中国は宇宙空間から米国を攻撃し得る兵器体系を開発し、運用訓練も進めていると主張した。
中国衛星の監視能力についても警戒感を示した。中国の衛星は地上に展開する米国やオーストラリア軍の移動を追跡し、その情報を長距離ミサイル体系に提供できるという。中国またはロシアとの衝突が起きれば、戦域は宇宙空間にも及ぶ可能性が高いとし、両国が宇宙で戦うための能力を意図的に整備してきたと指摘した。
こうした見方は、米宇宙軍の公式分析にも反映されている。「未来作戦環境2040」報告書は、宇宙を巡る長期的で不可視の衝突がすでに始まっていると分析。中国は対衛星ミサイル、指向性エネルギー兵器、ロボット衛星、AIベースの標的システムなどを通じ、2040年までに米国と同等、もしくはそれを上回る優位の確保を目指しているとした。
報告書はさらに、中国がブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)を活用し、単一の運用者が衛星群を統制する技術を研究していると指摘した。衛星妨害やGPS妨害を自然発生的な障害に見せかける手法の開発も進めているとされ、単発の打撃ではなく、相手の戦力を段階的に弱体化させる戦略との見方を示した。
これを受け、米国では防御にとどまらない対処能力の確保が必要だとの認識が強まっている。ゲグノン氏は「米国とオーストラリアは宇宙資産を守るだけでは足りない」と述べ、「必要な場合には敵の宇宙能力を無力化する準備が必要だ」と強調した。
同盟国のオーストラリアも対応を進めているが、能力差はなお大きい。先週公表された米国研究センターの報告書は、オーストラリアは宇宙能力で同盟国に後れを取り、その差を埋める明確な戦略も欠いていると評価した。一方で、今後10年間に最大120億ドル(約1兆8000億円)を宇宙分野に投じ、多重軌道の衛星通信体系を構築する計画だとしている。
米国の投資規模はさらに大きい。米空軍が要求した次期会計年度予算3388億ドル(約50兆8200億円)のうち、宇宙軍分は711億ドル(約10兆6650億円)。前年比124%増となる。主な内訳は、宇宙統制システムが216億ドル(約3兆2400億円)、衛星通信が67億ドル(約1兆50億円)、ミサイル警戒が68億ドル(約1兆200億円)で、このほか衛星のサイバー防護関連費も盛り込んだ。
チャンス・ソルツマン宇宙軍参謀総長は、今回の予算について「宇宙で優位を確保する世代的な機会だ」と評価した。米国は監視、通信、防衛を横断する投資を通じ、中国の宇宙戦力拡大に対抗する構えだ。
専門家の間では、宇宙が軍事競争の中核領域としての性格を一段と強めており、今後の米中戦略競争の主戦場の一つになる可能性が高まっているとの見方が出ている。