電池業界では、2026年1〜3月期を底に収益回復局面へ入るとの見方が出ている。炭酸リチウムのスポット価格は2025年末の約9ドル/kgから、2026年1〜3月期には20ドル/kg台前半まで2倍超反発した。中国での供給制約に加え、エネルギー貯蔵システム(ESS)需要の拡大が相場を支えた。4〜6月期以降は、この上昇分が正極材価格に本格的に転嫁され、引当金の戻入れも収益改善を後押しする見通しだ。
原材料市場の調査会社Benchmarkによると、2026年1〜3月期の炭酸リチウム価格は20ドル/kg台前半まで急反発し、前年同期比で約51%上昇した。アジアの炭酸リチウム・スポット価格は2025年下期を通じて在庫の取り崩しが続き、下落基調にあったが、年末には約9ドル/kgまで下落した。その後、在庫が想定ほど回復しないなかで、年初に一部企業が在庫確保に動き、短期的な調達需要が価格を押し上げた。
反発の直接要因は、中国・江西省で実施された環境監査に伴う鉱山稼働の制限だ。江西省は中国の主要なリチウム産地の一つで、廃棄物規制の強化に伴う監査が採掘スケジュールの遅れにつながった。再稼働時期の不透明感が先物市場での投機的な買いを呼び込み、価格変動を大きくした。
Benchmarkは、2025年12月にESS導入が急増した後、その勢いが2026年初まで続き、需要の下支え要因になったと分析している。DS投資証券は、リチウム価格の強含みが当面続く可能性は高いとみる。欧米のリチウム精錬所が新規投資に踏み切るには、価格が少なくとも25ドル/kgを上回る必要があるが、現水準はその採算ラインには届いていないという。
欧米では、中国産リチウムへの依存を短期的に減らしにくい構図がなお続く。中国側にも鉱山の再稼働を急ぐインセンティブは大きくない。Benchmarkは、リチウム市場は2026年を通じて供給タイトの状態が続き、需給緩和は2027〜2028年になると予測した。
こうした回復の兆しは輸出指標にも表れている。ハンファ投資証券によると、2026年1〜3月期の国内正極材輸出量は4万9000トンと前期比8%増え、輸出単価も23.7ドル/kgと同2%上昇した。品目別では、NCA正極材の輸出量が1万7000トンと四半期ベースで過去最高を更新した。欧州向けEV・電動工具需要の持ち直しに加え、米国向けESS出荷の拡大が主因とされる。
NCM正極材の輸出量は3万2000トンで、前期比5%増だった。水準自体はなお低いものの、月次ベースでは回復が続いている点が前向きに評価されている。米国向けNCM正極材の出荷は、2025年10月の補助金中断後、2026年1月に底を打ち、2〜3月にかけて段階的な回復局面に入った。
4〜6月期には、価格転嫁と引当金の戻入れが本格化し、収益改善がより明確になる見通しだ。ハンファ投資証券は、リチウム価格の上昇分が4〜6月期の正極材販売価格に本格的に反映されるとみている。1〜3月期の炭酸リチウム価格は20ドル/kg台前半で推移しており、その上昇分が4〜6月期の契約単価に織り込まれ始める局面にある。
LG Energy Solutionも生産切り替えの前倒しを進め、2026年の出荷量最大化を図っている。正極材各社が2025年のリチウム安局面で積み増した引当金は、販売価格の回復に伴って順次戻し入れられ、収益改善幅を押し上げるとの見方もある。ニッケル、マンガン、コバルトなど他の原材料価格が安定していることも、コスト面で追い風となっている。
DS投資証券は、正極材メーカーを中心に、引当金の戻入れと販売価格の上昇を背景とした業績予想の上方修正が進むとみている。2026年1〜3月期を境に、EV需要減速の影響は収束に向かうとの判断だ。電池セクターの反転要因として、リチウム価格の上昇、ビッグテックによるESS発注への期待、欧米のエネルギー安全保障政策の具体化、BEV需要の反発の4点を挙げた。これらの材料が順次顕在化するなか、足元はセクター反転の初期局面にあると分析している。
とりわけ焦点となるのは、6〜7月に予定される「韓国版IRA」の詳細具体化と、EUの産業加速化法(IAA)の確定だ。年後半にかけて、国内の電池・正極材メーカーの受注見通しを左右する分岐点になるとみられる。業界関係者は「国内生産税額控除の対象範囲と支援水準が具体化しなければ、セル・素材各社の業績の輪郭はなお見えにくい」と話した。