米上院で審議が進むデジタル資産市場構造法案「CLARITY Act」は、4月内の採決が事実上見送られた。5月に上院委員会で審議が開かれれば法案審議の流れを維持できるとの見方がある一方、会期日程の逼迫や政治案件の重なりから、年内成立にはなお不透明感が残っている。
CoinDeskが4月22日(現地時間)に報じたところによると、上院関係者やロビイストの間では、年内成立を視野に入れるには7月までに上院本会議での採決に持ち込む必要があるとの見方が出ている。最大の変数は米上院銀行委員会の日程だ。同委員会を通過した後は、すでに別案を扱った農業委員会側との法文の擦り合わせも必要になる。
審議の遅れの主因として浮上しているのが、ステーブルコインの報酬制度を巡る利害対立だ。共和党のトム・ティリス上院議員が銀行業界との協議を続けており、その影響で日程がさらに後ろ倒しになっているという。ただ、上院補佐官は「今後数週間の遅れがあっても、まだ取り返しのつかない段階ではない」との認識を示している。
これまでの争点のうち、分散型金融(DeFi)を保護する条項はおおむね整理されたとされる。ただ、法案全体の文言はなお確定していない。民主党は、ドナルド・トランプ大統領のような高位公職者を巡る暗号資産関連の利益相反を防ぐため、倫理条項の導入を求めている。
上院補佐官によると、関連する文言の調整は続いているものの、銀行委員会版には盛り込まれず、後続の審議段階で加えられる可能性が高いという。市場規制を監督する委員の全員任命を求める要求まで整理できれば、民主党からの賛成票をさらに確保できるとの見方も出ている。
時間は大きな制約になっている。上院は8月以降、事実上の選挙モードに入るため、それまでに消化できる立法日程は限られる。国土安全保障省予算や中東情勢への対応、有権者の市民権証明を巡る法案、Fed人事を巡る承認案件など主要案件が重なっており、暗号資産関連法案が優先順位を確保しにくい状況だ。
下院の手続きも不確定要素だ。仮に上院が法案を可決しても、下院ではすでに可決済みの法案との相違を調整したうえで、再度の採決手続きが必要になる。ただ、大きな対立がなければ、下院での再調整は比較的速く進むとの見方が出ている。
最終段階となるトランプ大統領の署名は、相対的には大きなハードルではないとみられている。ただしトランプ氏は3月、「有権者の市民権証明に関する法案が先に処理されなければ、いかなる法案にも署名しない」と表明しており、不確実性は残る。
最大の争点であるステーブルコインの報酬制度は、なお妥協点を探る段階にある。現時点で議論されている方向性は、預金保険に類する性格を持つ商品や、預金のように機能する商品への収益支払いを禁じる一方、Coinbaseのような企業には、クレジットカードのリワードに近い仕組みのプログラム設計を認める余地を残すというものにとどまっている。
もっとも、銀行業界の反発は依然として強い。業界側は「時間がない」とみており、デジタル資産業界のロビー団体も、委員会での修正審議が早期に開かれなければ、年内の法案成立そのものが頓挫しかねないと警戒感を強めている。
一方で、一部の分析機関は年内成立の可能性を「五分五分、あるいはそれ以下」とみており、慎重な姿勢を崩していない。今後の焦点は、米上院銀行委員会が修正審議の日程を確定できるかどうか、そして長らく公表されていない法案の詳細文言が開示されるかどうかにある。
この段階で合意に達すれば審議は加速する可能性があるが、再び対立が表面化すれば年内成立は一段と難しくなる公算が大きい。もっとも、11月の中間選挙後、会期末の審議でなお最終的な機会が残るとの見方もある。