Teslaは、既存のHW3(Hardware 3)搭載車では無監督版FSD(完全自動運転)に対応できないことを正式に認めた。提供開始時期も再びずれ込み、HW4への移行支援や既存顧客への対応が焦点となっている。
InsideEVsやElectrekなどの海外メディアによると、イーロン・マスクCEOは22日(現地時間)、2026年1〜3月期の決算説明会で「HW3には無監督版FSDを実現する能力がない」と述べた。
理由についてマスク氏は、HW3のメモリ帯域幅がHW4の約8分の1にとどまり、完全自動運転に必要な計算処理をこなせないためだと説明した。
現在、Tesla車の約400万台がHW3ベースで稼働しており、この中にはFSDをオプションで購入した車両も含まれる。無監督版FSDが既存車で利用できなくなれば、買い替えやハードウェア更新を迫られる利用者が増える可能性がある。
Teslaは対応策として、HW4搭載車への移行支援を検討している。FSD購入者に対しては、HW4搭載車への下取りを優遇条件付きで提供する案や、既存車を使い続ける場合にはコンピュータやカメラを含むハードウェア交換を支援する案が俎上に載っている。
ただ、こうした作業は単なる部品交換では済まず、大掛かりな改修になる可能性が高い。既存のサービスセンターだけでは、対応能力に限界があるとの見方も出ている。
このためTeslaは、大都市圏に「microfactories」型の専用改修拠点を整備する案も検討している。マスク氏は、サービスセンターだけでの対応は遅く非効率であり、「小規模な生産ラインのような体制が必要だ」との考えを示した。
長期的には、HW3搭載車全体をHW4へ切り替える可能性も示唆した。
無監督版FSDの投入時期も再び後ろ倒しとなった。マスク氏は、個人向け車両への無監督版FSDの提供開始を2026年10〜12月期に延期すると明らかにした。
Teslaは、複雑な交差点、不完全な車線、天候の変化といった地域ごとの道路事情を踏まえ、安全性を確認できた地域から段階的に機能を広げる方針を示している。
ソフトウェア面ではアーキテクチャ刷新も並行して進める。Teslaは次世代のFSD v15について、「純粋なAIベース」のアーキテクチャへ全面移行し、年内または来年初めの投入を目指すとしている。
同社は、大規模展開に先立って安全性を大幅に高めるための基盤刷新が必要だと強調した。
今回の発表は、Teslaがこれまで掲げてきた「ソフトウェア更新だけで自動運転を完成させる」という戦略が限界に直面していることを示している。HW3搭載車が事実上、無監督版FSDの対象外となったことで、先行購入者への補償範囲や更新費用、適用基準を巡る議論が広がる可能性がある。
今後の注目点は、HW4移行の進捗と改修インフラの整備、無監督版FSDの実際の投入時期、既存顧客への補償方針の3点だ。自動運転の商用化を前に、Teslaは技術、コスト、信頼性の課題を同時に問われる局面に入った。