ロシアは7月1日から、対外貿易決済で暗号資産の利用を正式に認める。西側の制裁で制約を受けるドル決済網を補完する新たな枠組みとして、制度化を進める動きとみられる。
BeInCryptoによると、対象となるのはビットコイン(BTC)とステーブルコインだ。これにより、ロシアの輸出企業は海外の取引先から暗号資産で代金を受け取れるようになる。
制度はロシア中央銀行と財務省が共同で整備した。2024年から試験運用してきた仕組みを正式制度に移す内容で、西側の金融制裁後も取引を続けてきた国・地域との対外決済が対象となる。ロシア当局は2027年半ばから、無許可の暗号資産仲介行為に対し、違法な銀行業務と同等の制裁を科す方針という。
狙いは、ドル基軸の国際決済網を経由しない決済ルートを制度の管理下に組み込むことにある。ロシアは2022年以降、SWIFTや主要なコルレス銀行網へのアクセスを大きく制限されており、代替手段の確保が課題となっていた。暗号資産は、こうした制約を補う決済手段として利用が広がっていた。
ロシアの暗号資産ベースの国際貿易は、2025年に約1兆ルーブル規模に達したとされる。石油、金属、穀物の輸出企業はすでに、中国、トルコ、インドなどとの取引で暗号資産決済を活用してきたという。アントン・シルアノフ財務相も、これを正式な規制枠組みに組み込む考えを公に支持していた。
制度の本格施行後は、暗号資産決済は認可を受けた8つのプラットフォーム経由に限定される。10万ルーブルを超えるすべての取引については、ロシア中銀と金融情報機関Rosfinmonitoringへの届け出が必要になる。これまで非公式なルートを使っていた企業は認可済みプラットフォームへの移行を迫られ、従わなければ2027年以降、違法な銀行業務と同等の制裁を受ける可能性がある。
決済手段はビットコインに限らない。ロシア当局はドル連動型ステーブルコインに加え、ルーブル連動トークンの導入も検討している。輸出入代金の決済に使える複数のデジタル資産の仕組みを整備する構想だ。
一方、制裁回避の手段として使われたステーブルコインの事例にも、あらためて焦点が当たっている。欧州連合(EU)は、キルギスで発行されたステーブルコイン「A7A5」を禁止しており、関連する資金フローの一部が制裁対象と結び付いていたと把握しているという。
ただ、ロシアは国内決済での暗号資産利用を禁じる方針を維持する。法定通貨は引き続きルーブルに限定し、デジタル資産の価格変動が国内金融システムに及ぼす影響を遮断する考えだ。暗号資産の利用を対外決済に限って認める形になる。
今後の焦点は、この新たな決済ルートを通じた資金の流れを、西側の制裁体制がどこまで追跡できるかにある。ロシアは長期的にSWIFTに依存しない代替決済ネットワークの構築を目指しており、制度施行後はBRICS諸国の参加動向も注目点となりそうだ。