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Coinbaseは、量子コンピューティングが将来的にブロックチェーン暗号を破る可能性を見据え、業界に早期対応を促す初の見解文を公表した。現時点で暗号資産は安全だとしつつ、最大の弱点はウォレットのデジタル署名にあると分析。耐量子暗号への移行コストに加え、移行できない休眠ウォレットや放置資産の扱いが大きな課題になるとした。

ブロックチェーン系メディアのBeInCryptoが21日(現地時間)に報じたところによると、Coinbase傘下の「Coinbase Independent Advisory Board on Quantum Computing and Blockchain」は、量子コンピューティングに関する初のポジションペーパーを公表した。同ボードには、スタンフォード大学、テキサス大学オースティン校、Ethereum Foundation、Eigen Labs、バル=イラン大学、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究者が参加している。

同ボードは、現時点ではデジタル資産は安全だとしながらも、ブロックチェーンの暗号体系を破れる水準の量子コンピュータはいずれ登場すると警告した。

最大のリスクとして挙げたのは、ウォレットの暗号基盤だ。資産の保有権を証明するデジタル署名は、十分に高性能な量子コンピュータが実現すれば破られる可能性があるという。

Coinbaseの最高セキュリティ責任者(CSO)、フィリップ・マーティン氏は「暗号資産は現時点では安全だ」とした上で、「ブロックチェーン暗号を脅かす量子コンピュータはいずれ実現する。業界は今から準備を始めるべきだ」と述べた。

報告書では、Bitcoinでは公開鍵情報が露出しているウォレットに約690万BTCが保管されていると推定した。一方で、Bitcoinのマイニング構造やハッシュ関数といった中核インフラについては、現時点で深刻な量子脅威は見込まれないとの見方を示した。

これに対し、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)を採用するEthereumのようなネットワークでは、バリデータの署名方式によって追加の攻撃面が生じると指摘した。Ethereumはレイヤー1のアップグレードを視野に、専用の耐量子対応ロードマップをすでに公表している。

技術的な準備が全く進んでいないわけではない。米国立標準技術研究所(NIST)は、複数の耐量子暗号標準をすでに策定している。

ただ、実装にはなお課題が多い。新たな耐量子署名は現行方式よりデータサイズが大きくなるため、取引処理の速度やコスト、保存容量に影響する可能性がある。DeFiでは数百万規模のウォレット移行に利用者自身の対応が必要となり、既存の金融システム以上にネットワーク全体での調整が難しくなる点も負担になる。

一部のチェーンは先行して対応を進めている。報告書によると、Solana、Algorand、Aptosは、利用者向けに耐量子暗号の選択肢を提供している、もしくは導入を準備している。

Coinbaseも、新たな暗号標準を迅速に適用できるよう柔軟なシステムを構築しており、インフラパートナーとともにアップグレードの準備を進めていると明らかにした。

報告書は、技術移行以上に難しい論点として、移行不能な資産の扱いも挙げた。秘密鍵を失ったウォレットや長期間使われていないウォレット、事実上放置されたアカウントは、アップグレードに参加できない可能性が高い。こうした資産は量子脅威にさらされ続けることになる。

このため同ボードは、各ネットワークがそうした資産を凍結するのか、権限を回収するのか、それとも現状維持とするのかについて、公開の場で方針を決めるべきだと提言した。そのうえで、「量子コンピュータはまだ暗号資産を破れないが、今のうちに対応の仕組みを整えなければ、その状態は維持できない」と強調した。

今回の文書は、量子脅威を理論的な議論にとどめず、ウォレット移行や署名方式、未移行資産の処理といった実務上の課題まで踏み込んで整理した点に意味がある。Coinbaseと主要ブロックチェーンが、対応策と移行コストをあわせて示したことで、業界内の議論も具体化しつつある。

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