米ニューヨーク州議会のアレックス・ボレス議員は、人工知能(AI)による雇用代替に備え、市民に現金を給付する「AI配当」構想を打ち出した。AI利用への課税やAI企業の持ち分取得などで財源を確保し、雇用移行支援や安全インフラ整備に充てる考えだ。Cointelegraphが21日(現地時間)に報じた。
ボレス議員はX(旧Twitter)への投稿で、「AIによる大規模な労働代替の可能性に備える必要がある」と説明。この構想を、AI時代に対応する経済政策として位置付けた。税制の見直しを通じて財源を確保し、市民に配当として還元する一方、企業に対してAIではなく人間の労働を維持するよう促す狙いもあるという。
政策の柱は、AIによる生産性向上の恩恵が一部企業に偏らないよう、還元の仕組みを制度化する点にある。提案では、AIが実際に労働を代替した場合、そこから生じる経済的利益の一部を市民に直接配分するとしている。
財源としては、AI利用への課税に加え、主要AI企業の持ち分取得、労働と資本を巡る税制改編などを挙げた。
こうした財源は現金給付だけに充てるものではない。ボレス議員は、職業転換や再教育、技能訓練のほか、AIの監督体制や安全インフラの整備にも活用する方針を示した。
政策文書では、「AIが生産性を大きく高め、富を集中させるのであれば、市民もその利益に対する持ち分を持つべきだ」と強調している。
背景には、AI普及が雇用市場に及ぼす影響への懸念の高まりがある。Goldman Sachsのリポートでは、過去1年間にAI導入によって毎月約1万6000件の雇用が失われたと推計した。
Amazon、Meta、Intel、Microsoftなどの大手テクノロジー企業は、AIによる効率化を理由に人員削減を進めており、削減を検討している企業もあるとされる。
一方で、AIが直ちに大規模失業を招くとの見方には慎重論もある。Morgan Stanleyは最近の報告書で、現時点でAIが労働市場に与える影響は限定的だと評価した。その上で、過去の技術革新が長期的には雇用拡大につながってきた事例にも言及した。
もっとも、AIが従来の技術革新とは異なる経路をたどる可能性も否定できないとしている。
ボレス議員のAI配当構想は、AI普及で生まれる生産性向上の利益を誰にどう配分するのか、また自動化の衝撃に対応する社会的セーフティーネットをどう設計するのかを問う提案といえる。制度化の可否はなお不透明だが、AI利用への課税と、その収益を市民還元や労働移行支援につなげる議論が米政界で広がるかどうかが注目される。