米国防総省は、米軍のGPS衛星群向け次世代地上管制システム「OCX(Operational Control Segment)」の開発事業を中止した。2010年の契約開始から長期にわたり技術的な問題と遅延が続き、政府支出は約62億7000万ドル(約9405億円)に膨らんだ。今後はOCXに代えて、既存のGPS管制システムの改修と機能強化を進める。
ITメディアArs Technicaによると、米宇宙軍は4月20日、国防総省が17日付でOCXの終了を決定したと明らかにした。
OCXは、GPSの次世代運用を支える地上管制システムとして計画された。最新のGPS III衛星が送る新たな信号への対応に加え、衛星群の運用を担うソフトウェア、地上管制施設、世界各地の監視拠点の改修を含む大規模事業だった。
国防総省は2010年、Raytheon(現RTX)に同事業を発注した。当初は2016年の完成と、総事業費37億ドル(約5550億円)を見込んでいたが、開発は大幅に遅延。中止決定時点での政府支出は約62億7000万ドルに達し、完了までの総額は80億ドル(約1兆2000億円)近くに膨らむとみられていた。
日程、コストの両面で計画から大きく逸脱した形だ。Raytheonは社名変更後の2025年にシステムを宇宙軍へ引き渡したものの、その後の統合試験で、運用開始に必要な準備が整っていないことが判明した。
GPS衛星群を運用するMission Delta 31のスティーブン・ホブス大佐は、「広範なシステム上の問題が見つかった」と説明したうえで、繰り返し是正を試みても、作戦スケジュールに沿って実戦配備するのは事実上困難だとの認識を示した。
宇宙軍は、問題は単なる遅延にとどまらないと説明している。ホブス大佐によると、一部機能で確認された不具合が、現在運用中のGPSの能力にも影響を及ぼす可能性があるという。
これを受け、国防総省と宇宙軍はOCXの代替として、数十年にわたり運用してきた既存GPS管制システムの改修・高度化を進める方針に切り替えた。宇宙軍は「アーキテクチャ進化計画」を通じて一部の性能改善をすでに適用しており、これを基盤に、ジャミングやスプーフィングへの耐性を高めた軍用Mコード信号など、最新衛星の機能を段階的に取り込む考えだ。
今回の判断は、米宇宙軍の調達方針の見直しとも重なる。単一の大型案件に長期間投資する手法から、機能ごとに分割して迅速に導入する段階的なアプローチへ軸足を移す流れだ。
宇宙取得・統合を担当する米空軍次官補のトム・エインズワース氏は、複雑な一体型システムよりも、能力を迅速に提供できる体制が必要だと強調した。
後継対応も動き始めている。宇宙軍は今月初め、Lockheed Martinと1億500万ドル(約158億円)規模の契約を結び、次世代GPS IIIF衛星の初期運用を支える地上システムのアップグレードに着手した。
GPS IIIF衛星は来年から打ち上げが始まる予定で、GPS III系列の最後の衛星も打ち上げを控えている。
一方、OCXは国防総省を代表する長期遅延案件としてたびたび問題視されてきた。国防総省は2016年にも一度、中止を検討したが、事業の再編を経て継続していた。
当時、米政府監査院は問題の要因として、取得段階での不十分な判断と、高止まりするソフトウェア欠陥率を指摘していた。結果として、この約16年に及ぶ事業は、最新衛星向けの専用管制システムを実用化できないまま打ち切られ、既存システムの延命と改修へとかじを切ることになった。