OpenAI(写真=Shutterstock)

OpenAIのキム・リヘイン副社長は17日、AIを巡る悲観論の広がりに反論し、業界は個人や家族、社会全体にもたらす恩恵をより明確に示す必要があるとの認識を示した。AIを巡る議論が過度な期待と極端な不安の間で二極化していると指摘した。

ITメディアのTechRadarによると、キム氏はSan Francisco Standardのインタビューで、AIに対する見方が極端に振れやすくなっていると説明した。そのうえで、「これは面白半分で語る話ではなく、深刻な問題だ」と述べ、OpenAIを含むAI業界には、この技術がなぜ個人や家族、社会にとって有益なのかを、もっと分かりやすく伝える責任があると強調した。

こうした発言の背景には、米国でAIへの信頼が弱まっている現状がある。Pew Research Centerの調査では、今後20年間でAIが米国に好影響を与えるとみる回答は17%にとどまった。

キム氏は、現在のAI論議は二つの極端へと偏っていると分析する。一方では、AIがあらゆる問題を解決するかのような過度な楽観論があり、もう一方では、人類の将来を過度に悲観する破滅論があるという。

その一方で、こうした不信感の拡大にはAI業界側にも責任があると認めた。AI企業が将来起きるとされた極端な変化を繰り返し打ち出しながら、実際には実現しなかった例もあり、そうした発信がかえって不信を広げたと説明した。

また、雇用や生活費、子どもへの悪影響などを巡る社会的な懸念が大きいことには理解を示した。ただ、こうした反応は過去の大きな技術革新の局面でも繰り返されてきたと述べた。

OpenAIは問題意識を示すと同時に、AIの経済的恩恵を社会全体にどう行き渡らせるかについても構想を打ち出している。最近公表した白書では、AIが「莫大な富」を生み出し得ると主張した。

白書では、キャピタルゲインを得る上位層への課税強化や法人税、AI収益に対する的を絞った措置などで財源を確保し、それを基に、誰もが恩恵を受けられる適応型の社会安全網を設計できると提案した。

さらにOpenAIは、AIが人間の力だけでは解決が難しかった科学分野の課題にも貢献し得るとした。白書には、疾病の治療や予防、食料不足の緩和、気候変動下でも強靱な農業の実現、安定的でクリーンなエネルギー分野のブレークスルーの前倒しにつながる可能性が盛り込まれた。

もっともOpenAIは、こうした提案を最終的な答えとは位置付けていない。AIの恩恵を誰もが享受できるようにするための、より広い議論の出発点だとしている。

一方、AI普及の副作用はすでに表面化している。フィンテック企業のBlockは、AIによる代替を理由に人員を約40%削減した。Pinterestも全従業員の15%を削減し、AIに置き換える計画だ。

こうした状況のなか、OpenAIに問われているのは、技術への楽観論を繰り返すことではなく、AIが実生活にどのような利益をもたらすのかを具体的に示すことだ。非営利組織として出発した後に企業構造と事業方針を大きく変えてきたOpenAIには、なお人類全体の利益を優先するという姿勢を社会に納得させる説明責任も残っている。

データセンター建設やAI開発拡大を巡る反対世論も続いており、AIの恩恵とコストを巡る議論は今後も一段と強まりそうだ。

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