核融合エネルギー業界で投資熱が続く一方、上場のタイミングや収益化の進め方を巡って業界内の溝が目立ち始めた。巨額資金が流れ込む中、いつ株式市場に踏み切るべきか、発電所の完成前に別の収益源を持つべきかを巡り、企業や投資家の見方が分かれている。
米ITメディアのTechCrunchが19日(現地時間)に報じたところによると、核融合スタートアップが直近12カ月で調達した資金は約16億ドル(約2400億円)に達した。ただ、業界内では上場の適切な時期や、発電所の完成前に周辺事業で収益基盤を築くべきかどうかを巡り、意見の隔たりが広がっている。
議論の中心にあるのはTAE TechnologiesとGeneral Fusionだ。両社は最近、上場企業との合併を通じた上場計画を相次いで打ち出した。研究開発の継続には数億ドル規模の資金が必要なうえ、既存の長期投資家に資金回収の道を開く狙いもある。
これに対し、業界内には慎重な見方が根強い。多くの関係者は、両社の上場はなお時期尚早だとみている。最大の理由は、核融合産業の重要な節目とされる「科学的損益分岐点」に達していないことだ。これは、核融合反応によって生み出されるエネルギーが投入エネルギーを上回る段階を指す。
TAE Technologiesは昨年12月、Trump Media & Technology Groupとの合併を発表し、資金確保に動いた。取引はまだ完了していないが、調達予定資金の一部を先行的に確保したとされ、研究を継続するための資金余力を確保したという。General Fusionも、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて数億ドル規模の資金調達を進めている。
業界が警戒するのは、上場後の説明責任だ。核融合業界のある幹部は、科学的損益分岐点に近づくか到達しない限り、四半期ごとの決算で投資家に示せる材料が乏しいと指摘した。目に見える技術成果が乏しいまま業績説明を迫られれば、投資家の信頼を損なう恐れがあるという。影響は個別企業にとどまらず、核融合産業全体に対する市場の信認低下につながる可能性もある。
事業化戦略を巡る見方の違いも広がっている。発電所の完成前でも収益源を確保しようとする企業がある。TAE Technologiesは電力エレクトロニクスと放射線治療分野で初期売上を上げており、Commonwealth Fusion SystemsとTokamak Energyは磁石の販売を進めている。
一方で、こうした周辺事業による収益確保に慎重な企業もある。中核技術の開発への集中が損なわれる可能性があるためだ。発電所の商用化という本筋から軸足がぶれれば、長期的な競争力に悪影響を及ぼしかねないとの見方が出ている。
もっとも、上場の適切な時期を判断する明確な基準はまだ固まっていない。科学的損益分岐点の達成から、実際に送電網へ電力を供給できる商業段階まで、さまざまな基準が挙がっているが、現時点でこれらを満たした企業はない。
そうした中、Commonwealth Fusion Systemsは来年中の科学的損益分岐点達成を目標に掲げており、これを機に上場を巡る議論が一段と活発化する可能性も指摘されている。
核融合業界の次の競争軸は、単純な資金調達額ではない。どの段階で資本市場の評価を受けるのかが、今後の焦点になりつつある。