SalesforceはTDXでの発表で、次世代のエージェント開発環境「Salesforce Headless 360」を発表した。AIエージェントがAPIやMCP、CLIを通じてSalesforceの機能を直接呼び出せるようにし、画面操作を前提とした従来のCRMのあり方を見直す。あわせて、開発、展開、信頼性確保の仕組みを刷新し、課金体系もユーザー単位から従量課金へ移行する方針を示した。
Headless 360では、画面を開いて操作しなくても、AIエージェントがSalesforceプラットフォーム全体の機能をAPI、MCPツール、コマンドラインインターフェース(CLI)のコマンド経由で実行できる。従来のようにWebブラウザ上でUIを操作する前提を外したのが特徴だ。
米VentureBeatは、Headless 360について、「推論し、計画し、実行するAIエージェントが主役となる環境で、GUI中心のCRMはなお必要か」という問いに対するSalesforceの答えだと伝えている。
Salesforceのジャイェシー・ゴビンダラジャン副社長は、「エージェントの作り方は出発点にすぎない。顧客はどの技術スタックを採用していても、エージェンティックシステムの構築過程でライフサイクル全体の課題に直面してきた」と説明。Headless 360は、数千社の顧客企業にエージェントを展開する中で得た知見を反映したものだと強調した。
Headless 360の柱は大きく3つある。
第1は、開発手段を限定しないことだ。60以上の新しいMCP(Model Context Protocol)ツールと、30以上の事前構成済みコーディングスキルにより、Claude Code、Cursor、Codex、Windsurfといった外部のコーディングエージェントから、Salesforceのデータ、ワークフロー、ビジネスロジック全体にアクセスできるようにする。SalesforceのIDE内で作業する必要はなく、任意のターミナルからAIコーディングエージェントを使ってアプリケーションの作成、展開、管理を進められるとしている。
第2は、複数のフロントエンドに展開できることだ。Agentforce Experience Layerにより、エージェント機能そのものは共通化したまま、Slack、Teams、モバイルなど各プラットフォームに合わせたインターフェースで提供できる。プラットフォームごとにUIを個別開発する必要はないという。
発表会場のデモでは、一度定義した体験を、追加のコードなしで6つの画面に展開したとしている。
第3は、信頼性の高いエージェントを構築するためのライフサイクル管理だ。Salesforceは、Testing、Evaluation、Experimentation、Observation、Orchestrationを含む新たな管理ツール群も公開した。
あわせて、エージェントの動作を決定論的に定義できるドメイン特化言語「Agent Script」も正式に公開し、オープンソース化した。
同社によると、企業内でAIエージェントの普及を進めるには、確率的に動作する大規模言語モデル(LLM)と、決定論的なアプローチを組み合わせる必要がある。LLMベースのエージェントは柔軟性が高い一方、企業は一貫した結果を求めるため、そのギャップを埋める手段としてAgent Scriptを位置付ける。
Agent Scriptは、従来のプログラミング言語が持つ決定論的な特性と、LLMの柔軟性を組み合わせた言語という位置付けだ。工程によっては明確なビジネスロジックに従わせ、別の工程ではLLMに自由に推論させるといった設計を可能にする。
Salesforceは今回のTDXで、OpenAI、Anthropic、Google Gemini、Meta Llama、Mistralの各AIモデルも統合した。一方で、MCPがAIエージェントの標準として定着するかはなお見極めが必要だとしており、MCPに加えてAPIとCLIも選択肢として提供する。
ゴビンダラジャン副社長は「MCPが標準として残るかどうかは分からない。登場当初、多くのエンジニアは、よくできたCLIの上にラッパーを載せたものだと受け止めていた。今でもCLIはMCPと同等、あるいはそれ以上だという声は多い」と述べた。
料金体系も見直す。SalesforceはHeadless 360について、ユーザー単位課金から従量課金へ移行する方針だ。AIエージェントが人の代わりに業務を担う場合、ユーザー単位のライセンスモデルは適合しにくいというのが同社の説明だ。