人工知能(AI)スタートアップの間で、実際の売上を上回る年次経常収益(ARR)を対外的に示す慣行が問題視されている。Legal AIスタートアップSpellbookの共同創業者兼CEO、スコット・スティーブンソン氏は、こうした手法によってARRが実態より大きく見えるケースがあると警鐘を鳴らした。
スティーブンソン氏は17日(現地時間)、X(旧Twitter)への投稿で、多くのAIスタートアップが高い成長率をうたう背景には、「正直ではない指標」の利用があると指摘した。
同氏が例として挙げたのは、3年のエンタープライズ契約だ。料金は1年目が100万ドル、2年目が200万ドル、3年目が300万ドルと、年を追って引き上がる想定になっている。
しかし、現時点で企業が受け取っている収入は1年目の100万ドルにとどまるにもかかわらず、最終年の300万ドルをARRとして対外的に示すケースが少なくないという。さらに顧客側には、契約開始から12カ月後に解約できるオプトアウト条項が付いている場合もあり、実質的に3年間が保証された契約ではないとした。
この手法で計算すれば、実際のキャッシュ創出ベースではARRが約3500万ドルの段階でも、企業は約1億ドルのARRがあるように見せることができる。実態の約3倍に膨らむ計算だ。
スティーブンソン氏はまた、エンタープライズAI企業の契約には、顧客先に配置するエンジニアのコストが含まれることがあり、その結果、1年目から逆ざやになる場合もあると指摘した。顧客が実際にオプトアウト条項を行使したり、3年目の価格交渉を強めたりすれば、エンタープライズAI企業の収益構造が一気に悪化する可能性があるとの懸念も示した。