写真=a16zのパートナー、マーティン・カサド氏

米ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitz(a16z)のパートナー、マーティン・カサド氏は、AI競争の重心が技術そのものから資本力へ移りつつあるとの見方を示した。基盤モデルの開発は、もはや一部の天才だけの領域ではなく、データと計算資源をどれだけ確保できるかが勝敗を左右するという。

同氏は英Financial Times(FT)のインタビューで、「AIのイノベーションは、もはや天才性の問題ではない。どれだけデータと計算資源を集められるかにかかっている」と語った。

これまでは、AIでどの課題を解けるかは技術力に大きく左右されていたが、現在は十分な資金を投じられるかどうかが重要になっているという。カサド氏は、かつては、がん治療や気候変動、新薬開発のような複雑な課題は、資金を投じても容易に解決できるものではなかったが、AIの登場によってその障壁が下がりつつあると指摘した。

AIモデル開発でも、資本力の重要性は一段と高まっている。同氏は「AIモデル開発は、人々が思うほど難しくない可能性がある。これまでモデル開発が特殊で、天才だけの仕事に見えていたのは、取り組む人が少なかったからだ」と説明。「今では博士号もなく、スタンフォード大学出身でもないチームが、十分な資金を背景に優れたモデルを作る例を実際に見ている」と述べた。

一方で、ミラ・ムラティ氏、イリヤ・スツケバー氏、フェイフェイ・リ氏のように、AIの挙動を深く理解する人材は依然として重要だとした。ただ、同氏は「彼らが持っているのは、天才性というより知識へのアクセスとネットワークだ」とも指摘。「時間が経てば、こうしたアクセスも広く開かれていく」として、最終的には資本力が競争を決めるとの認識を示した。

AIモデルの発展段階については、大規模な資金を投じて基盤モデルを学習させるプリトレーニング(事前学習)の局面は、事実上一巡したとの立場を示した。その上で、次の発展を牽引するのは強化学習(RL)だとみている。

同氏は「今は、結果を検証できる個別の課題に取り組み始める段階だ」と説明した。「問いは、AIが特定分野で使えるかどうかではない。多くの場合、その答えはイエスだ。本当の問いは、費用対効果があるかどうかだ」と語った。

主要なAIモデル開発企業の収益構造については、なお不透明感が残るとの見方も示した。

カサド氏は「過去のモデル学習と比べれば、経済性は改善しているように見える。ただ、現在進行中の学習を基準にすると、採算性はなお厳しい」と述べた。さらに「モデルの有用性は3〜6カ月しか持たない。その後は再学習が必要になる。これほど急速に価値が低下する資産と、これほど急成長する企業がどこで収斂するのか、まだ誰にも答えはない」と指摘した。

また、「核心は、AI研究所がどれだけ長期間にわたり、低コストで資本を調達できるかにある」とも述べた。「Anthropicが300億ドル(約4兆5000億円)を調達するような局面では、モデルの上に成り立つサービス分野全体を合算しても、同規模の資金を呼び込むのは難しい」との見方を示した。

その上で、「2年後か6年後かは分からないが、いずれ大規模モデルの研究企業はブランド面で独占的な地位を築き、企業市場で大きな影響力を持つ既存勢力になる」と予測した。一方で、「その時点から成長は急速に鈍化し、価値創出の中心は別の層へ移る。特定産業やアプリケーション、小型モデルを狙うプレーヤーに価値が戻るだろう」と述べた。

キーワード

#AI #Andreessen Horowitz #a16z #基盤モデル #事前学習 #強化学習 #資本力
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.