スイスの銀行Sygnumは、ビットコイン現物ETFを日次の資金流出入だけで評価すべきではないとの見方を示した。足元で重要なのは短期的な売買動向ではなく、年金基金や保険会社などの機関投資家が、ビットコインを資産配分の対象として組み入れ始めている点だという。
ブロックチェーンメディアのBeInCryptoが16日(現地時間)に報じたところによると、Sygnumの最高投資責任者(CIO)、ファビアン・ドリ氏は「ビットコイン現物ETFの日次フローだけで市場を読むと、より大きな構造変化を見落としかねない」と述べた。
ドリ氏が重視するのは、年金基金、大学基金、政府系ファンド、保険会社といった機関投資家の動きだ。こうした投資家がビットコインを標準的なポートフォリオ構成要素として扱い始めており、市場の本質は日々の資金の出入りではなく、ウォール街でビットコインの組み入れが資産配分の枠組みに組み込まれつつあることにあると説明した。
その根拠として、足元の動きを3点挙げた。まず、JPモルガンのリサーチ部門は、2026年のビットコイン現物ETFへの機関投資家マネーの流入について、保守的なシナリオで150億ドル、強気シナリオで400億ドルに達する可能性があると予測した。これは、2025年にビットコイン現物ETF全体へ流入した566億ドルに上乗せされる追加需要を意味するという。
商品面での変化にも言及した。JPモルガンは、BlackRockの「iShares Bitcoin Trust ETF(IBIT)」に連動する仕組み債の発行を開始した。ドリ氏はこれを単なる投資アイデアではなく「配管」と表現し、ビットコインが一時的な流行ではなく、既存の金融商品システムに恒常的に接続され始めたことを示す動きだと位置付けた。
また、Morgan Stanley Investment Managementは、自社のビットコイン現物ETF「MSBT」を投入した。上場初日の売買代金は約3400万ドルに達し、最近のETF新規上場事例の中でも上位1%に入る水準だったという。
ドリ氏は、ETFで観測される一部の売りシグナルについても、実際にはポートフォリオのリバランスの結果にすぎない可能性があるとみる。例えば、ビットコインの上昇で当初2%だった組み入れ比率が4%に膨らめば、資産配分ルールを守る機関投資家は比率を引き下げる。この場合、日次データ上は流出として表れるものの、リスク回避ではなく通常の運用行動だとしている。
具体例として、2025年12月にIBITで27億ドルの純流出が発生したケースを挙げた。その後4カ月の時点で、ビットコイン価格は年初来で約30%下落していたにもかかわらず、同ETFには再び15億ドルの純流入があった。価格下落局面でも資金流入が続いたことは、単純な値動き追随型の資金とは異なる性格を示しているという。
ドリ氏は「ビットコイン現物ETFが需要を生んだのではない。投資しない言い訳をなくしただけだ」とも述べた。投資手段が整ったことで、機関投資家にとってビットコインを検討しない理由が薄れているとの見方を示した形だ。
こうした見方はSygnumに限ったものではない。Fidelity Digital Assetsは3月のレポートで、ビットコインを保有するか否かではなく、なぜ配分比率を0%のまま維持するのかを説明すべき段階に入りつつあると指摘した。Morgan Stanleyの資産運用部門も月初の分析で、定期的なリバランスを前提に少額の暗号資産配分を推奨した。21Sharesも同日のレポートで、体系的なリバランスによって「ボラティリティ・アルファ」を得る手法として、ビットコイン比率3%を提案している。
ドリ氏は、この流れが続けば、10年後には主要な機関投資家にビットコインを保有しているかどうかを尋ねること自体が、債券を保有しているかどうかを問うのと同じくらい不自然になる可能性があるとみる。市場の関心は今後、保有するかしないかではなく、どの程度の比率で、どのような理由で組み入れるかへ移っていく公算が大きいとしている。