BitMEXは16日(現地時間)、量子コンピュータに脆弱とされるビットコインをあらかじめ凍結する案に代わる仕組みとして、「Canary Fund」を提示した。量子コンピュータによる実際の脅威が確認された場合に限って凍結を発動する構想で、事前凍結への反発に配慮した代替案と位置付けている。
Cointelegraphによると、この案はBitMEX Researchがビットコインのソフトフォーク構想として提起したものだ。
中核となるのは、即時凍結ではなく「カナリア方式」を採る点にある。量子コンピュータが実際にビットコインを奪取できることが証明されるまでは、古いビットコインの移転を認める。一方で、全面的な凍結は「ビットコインを盗み出せる量子コンピュータの存在が立証された場合」にのみ発動する設計とした。
具体策として示したのが「Canary Fund」だ。秘密鍵は不明だが、形式上は有効な特殊なビットコインアドレスを用意し、利用者がそこへビットコインを送り、懸賞金のように積み上げる仕組みを想定している。
十分な性能を持つ量子コンピュータの保有者がそのアドレスから資金を引き出せば、それ自体が量子脅威の現実化を示すシグナルになる。BitMEXは、量子攻撃能力を持つ主体に警告シグナルを発させる誘因を与える仕組みだと説明した。
今回の提案は、15日に示されたBIP-361の代替案に当たる。BIP-361は、長期間動いていないビットコインのうち量子攻撃に脆弱なものを、将来的な奪取リスクに備えて凍結する内容だ。ただ、コミュニティの一部では、権威主義的で資産没収につながりかねないとの反発が出ていた。
BitMEX案はこうした反応を踏まえ、凍結対象の決定を可能な限り先送りする方向を打ち出した。Canary Fundの監視枠組みの下では、量子コンピュータによる悪意ある奪取が現実に起きない限り、古いビットコインも利用し続けられるとしている。
また、Canary Fundに参加した資金が完全にロックされるわけではない。BitMEXは、参加者はマルチシグを使うことで、いつでもビットコインを引き出せると説明した。
このほか、BIP-361が示した「5年」の時点を過ぎた後も一定の安全期間を設け、量子攻撃に脆弱な取引を限定的に認めつつ、その取引で生じたコインを一定期間ロックする案も盛り込んだ。
BIP-361の共同執筆者であるジェイムソン・ロップ氏も、現時点でこの案を直ちに有効化する段階にはないとの見方を示した。自身のビットコイン改善提案についても、発動準備が整った案ではなく、「緊急時対応計画のためのラフなアイデア」に近いと説明している。
同氏はX(旧Twitter)で、「この案が好まれないことは分かっているし、自分も好きではない。ただ、代替案のほうがさらに望ましくないと思ったため提案した」と投稿した。
さらにロップ氏は、量子コンピュータの進展によって、ビットコインに量子耐性署名方式を組み込む案が合意可能な水準に達した場合に起こり得る「流通供給ショック」への対応を描いたスケッチにすぎないとも述べた。
量子リスクを巡っては、事前に凍結すべきか、それとも実害が確認されてから対応すべきかを巡る議論が続いている。焦点は、ビットコインネットワークが量子コンピュータのリスクをどのような手続きと合意形成で扱うのかに移りつつある。