AIサーバー向け需要の急拡大を受けてメモリ半導体の需給が逼迫し、いわゆる「チップフレーション」がゲーム市場に広がっている。コンソールやゲーミングPCの値上げが相次ぐほか、ソフト価格にも上昇圧力が及んでおり、ゲームを取り巻くコスト負担は一段と重くなっている。
PC・コンソール向けの新作投入を控える韓国ゲーム各社にとっても、こうした環境変化は無視できない。ユーザーの参入コスト上昇に加え、運営側のインフラ費用も膨らみつつあるためだ。
◆メモリ高騰が引き金、ハード値上げが加速
背景にあるのは、AIインフラ投資の拡大に伴う半導体需給の逼迫だ。半導体メーカーが高帯域幅メモリ(HBM)やサーバー向けDRAMの生産を優先し、PCやコンソールに使われる民生向けメモリの供給はタイトになっている。
1~3月期には、サーバー向けDRAMとHBMの売上高がメモリ全体の60%を占めた。
価格の上昇ペースも急だ。Counterpoint Researchによると、1~3月期のDRAM契約価格は前期比で50%超、NANDフラッシュは90%超上昇した。
TrendForceは4~6月期について、DRAMがさらに90~95%、NANDフラッシュが55~60%上昇すると予測する。Gartnerも、年末までにDRAMやSSDの急騰を背景にPC価格が全体で17%上がるとみている。
こうしたコスト上昇は最終製品価格にも波及している。Sony Interactive Entertainment(SIE)は2日、PS5の価格引き上げを発表した。標準モデルとデジタルエディションはそれぞれ100ドル上昇し、649.99ドル(約9万7500円)と599.99ドル(約9万円)となった。上位モデルのPS5 Proは150ドル引き上げ、899.99ドル(約13万5000円)に設定した。
追加値上げは約8カ月ぶり。韓国価格に反映された場合、標準モデルは100万ウォン前後、PS5 Proは130万ウォンを上回る可能性がある。
MicrosoftもXbox Series X/Sを段階的に値上げしており、追加値上げの可能性も指摘されている。Nintendo Switch 2は現時点で公式な値上げ発表こそないものの、発売直後から品薄が続き、実勢価格は70万ウォンを超えている。
市場では、チップフレーションが長引けばSwitch 2にも値上げ圧力が及ぶとの見方が出ている。
ゲーミングPCも例外ではない。業界では、PCの平均価格が年末までにさらに20%超上昇するとの見方がある。Gartnerは、500ドル未満のエントリーPCが2028年までに市場から完全に姿を消す可能性があるとの見通しも示した。
携帯型ゲーミングPCでは、Lenovoが「Legion Go 2」を値上げした。標準モデルは1099ドル(約16万5000円)から1499ドル(約22万5000円)へ、上位モデルは1349ドル(約20万2000円)から1999ドル(約29万9800円)へ引き上げられ、上昇率は最大で約50%に達した。
◆ソフト価格にも波及、需要減懸念も
ハードの値上げはソフトにも波及しつつあり、ユーザー負担はさらに重くなっている。
世界最大のPCゲームプラットフォームSteamは3月28日、35通貨の価格算定基準を改定した。韓国向けでは、ウォン建て価格の基準となるドル・ウォン為替レートを従来の1ドル=1150ウォンから1450ウォンに引き上げ、20%超の見直しとなった。
もっとも、今回の改定ではゲーム会社が「為替連動」「購買力連動」「多変数価格」の3方式から選べる。Steam推奨の購買力基準を適用した場合、69.99ドルのゲーム価格は7万1500ウォンで、現状と大きくは変わらない。
一方、ゲーム会社が為替連動を選べば、同じタイトルの韓国販売価格は10万ウォンを超える。最終的な価格設定は各社の判断に委ねられるため、値上げ幅には差が出そうだ。
コスト増が需要を冷やすとの懸念も強まっている。実際、値上げ直前には駆け込み需要が発生した。Circanaによると、PS5の週間販売台数は値上げ実施前の週に年初来高値を更新し、米国のゲームハード全体の週間販売台数も前年同期比で2倍に増えた。
値上げ前の需要先食いが起きた格好だ。複数回の値上げを経た結果、PS5の最廉価モデルは発売当初より200ドル高い価格で販売されている。
TrendForceは、2026年の世界コンソール市場が4.4%縮小すると予測する。人気ゲーム「Fortnite」の開発元Epic Gamesは最近、1000人規模の人員削減を発表しており、その背景としてFortniteの参加鈍化や業界全体の消費減速などが挙げられている。
業界内では、発売直後の購入を避け、評価を見極めてから買う動きが一段と広がるとの見方もある。従来は発売後の時間経過とともに価格が下がるのが一般的だったが、足元では逆の流れが続いている。
新規ユーザーの参入コストが上がれば、市場の潜在需要層の取り込みにも悪影響が及びかねない。
◆韓国ゲーム各社、大型新作投入前に逆風
チップフレーションの影響は韓国のゲーム各社にも及ぶ。韓国ゲーム業界は欧米市場の開拓を狙い、数年前からPC・コンソール向けの大型タイトル開発を進めてきた。新作の多くはUnreal Engine 5ベースの高負荷グラフィックスを前面に打ち出しており、高性能機を前提とする構造になりやすい。
機器価格の上昇は、ゲーム開始に必要な初期費用を押し上げ、新作の初動販売にも影響しかねない。加えて、AI業界によるデータセンター向けサーバー需要の拡大で、ゲーム運営に必要なサーバー費用やクラウド費用も上昇している。
Omdiaは、ライブサービス型ゲームやマルチプレイ向けサーバー、大規模なバックエンド運用への依存度が高いゲーム会社ほど、このコストショックの影響が大きいとみる。ユーザーの参入障壁上昇と運営コスト拡大が同時に進んでいるためだ。
NCSoftの共同代表、パク・ビョンム氏は最近の記者懇談会で、「半導体価格が上がっても、サイクル上いずれ下がると考えている。その時期をどうやってやり過ごすかが重要だ」と述べた。
一方で、「GTA 6」のような超大型タイトルが、機器価格の上昇にもかかわらず需要をけん引するとの楽観論もある。ただ、コンソール価格が100万ウォンを超える水準に達するなか、キラーコンテンツの効果が従来ほど幅広く及ぶかは不透明との見方もある。価格上昇を吸収できるユーザー層そのものが縮小する可能性があるためだ。
チップフレーションは、新規ファブの稼働が安定する来年末ごろまで続くとの見方が優勢だ。業界関係者は「メモリ不足は単なる供給難にとどまらない。コンソールやPCの値上げに加え、ソフトやサブスクリプション価格の見直し、サーバー費用の上昇まで含め、ゲーム市場全体にコストショックをもたらしている」と話している。