Appleが広告事業の拡大に本腰を入れる。今夏には地図アプリへの広告導入を進めるほか、広告機能を備えた事業者向けプラットフォーム「Apple Business」も投入し、中小企業向け広告市場の開拓を狙う。iPhoneの買い替え周期長期化でハードウェア事業の成長が鈍る中、サービス収益の拡大を急ぐ構えだ。
Business Insiderが15日(現地時間)に報じた。Appleは地図アプリへの広告掲載を始める計画で、これに合わせて「Apple Business」を立ち上げ、広告事業と事業者向けサービスの一体運営を加速させるという。
現在、Appleの広告売上高の約95%はApp Storeのアプリインストール広告が占める。今回の施策により、広告収益の源泉を広げるとともに、中小企業向け市場にも本格参入する考えとみられる。
地図広告は、飲食店や小売店など、実店舗への送客を狙う事業者の需要が大きい分野だ。業界ではGoogleマップの先行事例を踏まえ、App Store広告を上回る収益余地があるとの見方も出ている。
成長期待を裏付ける数字もある。市場調査会社Omdiaは、Appleの2025年の広告売上高が前年比15%増の約70億ドルに達したと推定している。
Appleはこれまで、プライバシー保護を基本的人権と位置付け、2021年にアプリ追跡透明性(ATT)を導入して広告業界に大きな影響を与えた。一方で、この時期を境にApple自身の広告収益は急増したとされる。業界内では「広告会社を名乗らない世界最大の広告会社」と評されることもある。
もっとも、広告事業の拡大には課題もある。Appleにとっては、プレミアムブランドとしてのイメージを損なわずに広告収益を積み上げられるかが大きなテーマとなる。
広告を含むサービス部門の売上高は現在、約1090億ドル規模に達し、同社の主要な成長ドライバーとなっている。その半面、収益確保を優先した過度な拡張ではないかとの批判も根強い。
象徴的なのがApp Store内での広告枠の拡大だ。かつてはスポンサー検索結果が中心だったが、現在は複数の広告掲載面へと広がっている。市場では、ハード販売の伸び悩みをサービス売上で補おうとするAppleの思惑を映しているとの見方が出ている。
さらに、広告事業の拡大を取り巻く規制環境も厳しさを増している。各国の反トラスト規制当局は、App Storeの手数料体系や閉鎖的なエコシステムを通じた支配力に強い関心を示している。
米司法省(DOJ)が、年間200億ドル(約3兆円)規模とされるGoogleとの検索提携契約に圧力を強めている点も、Apple経営の大きな変数だ。
規制リスクが高まる中、Appleがブランド毀損への懸念を抑えつつ、地図広告を新たな収益の柱に育てられるか。業界の視線が集まっている。