Fordのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は4月14日、中国製EVの米国市場への流入を阻止すべきだとの考えを示した。中国政府の補助金や過剰生産によって公平な競争は成り立たないと指摘し、サイバーセキュリティや個人情報保護の面でも懸念があると訴えた。
EV専門メディアのInsideEVsが14日(現地時間)に報じた。ファーリー氏はFox Newsのインタビューで、中国製EVが米国の自動車産業だけでなく、製造業全体に打撃を与えかねないと警告した。
ファーリーCEOは中国製EVの米国進出について、「米国市場に入れるべきではない」と主張した。そのうえで、「製造業は米国の中核であり、中国の輸出攻勢でこれを失えば大きな痛手になる」と述べた。
同氏は、中国政府の補助金と過剰な生産能力を主な問題として挙げた。中国には100社を超えるEVメーカーが存在し、BYDやXiaomiなどは、米メーカーより低価格で機能面でも競争力のある車種を投入しているとの認識を示した。
その結果、中国国内では価格競争が激化し、欧州やカナダでは中国製EVの流入が拡大していると指摘した。こうした中国勢との競争については、「公平な競争は成り立たない」と述べた。
また、中国の生産能力が米国の需要を大幅に上回っている点も強調した。中国の自動車内需は約2900万台規模だが、生産能力は5000万台を超えると説明。中国には、米国の自動車生産と販売の両方を賄えるほどの余力があるとの見方を示した。
安全保障上の懸念にも言及した。中国車は車載カメラなどを通じて大量のデータを収集し得るとして、サイバーセキュリティと個人情報保護のリスクを指摘した。米政府も同様の理由から、バイデン政権下で中国製車両の接続技術を制限する規制を整備した経緯があるという。
政策面の動きも、米自動車業界の警戒感を強めている。カナダは、中国製自動車の限定的な輸入に対して、より低い関税率を適用する新たな政策を打ち出しており、ファーリーCEOは、こうした車両が国境を越えて米市場に流入する事態を防ぐ必要があると述べた。
米政界と業界では、中国の自動車メーカーに対する警戒が超党派で強まっている。3月には、自動車業界のロビー団体5団体の代表が、大統領とスコット・ベセント氏に書簡を送り、経済面と国家安全保障上のリスクを理由に、中国メーカーを米市場から締め出すよう求めた。
今月初めには、民主党議員も、中国企業による米国内での工場建設は、米自動車メーカーに対抗が難しい競争優位をもたらし、国家安全保障上の危機を招く可能性があると主張した。
こうしたなかでも、Fordは中国勢をグローバル競争のベンチマークと位置付けている。ファーリーCEOは、中国勢と正面から競争できる水準のEV投入が必要だとし、ケンタッキーで生産する新たな普及価格帯EVに言及した。
中国製EVが当面は米国で販売されなくても、Fordを含む世界の完成車メーカーは、欧州やカナダなどの市場ですでに中国勢との競争を迫られているとしている。