韓国生産技術研究院は15日、全固体電池の主要材料である硫化物系固体電解質について、高いイオン伝導性と空気中での安定性を両立した新材料を開発したと発表した。既存材料に比べてイオン伝導度を77倍に高めるとともに、有毒な硫化水素の発生量を40%削減したという。
固体電解質は、全固体電池の内部で正極と負極の間をリチウムイオンが移動する役割を担う。なかでも硫化物系はイオン伝導度が高く、有力な候補材料とされている。
今回、同院のキム・テヒョ首席研究員らの研究チームが注目したのは、硫化物系固体電解質の一種である六リチウムリン五硫化ヨウ化物(Li₆PS₅I)だ。製造コストが低く、リチウム金属と接触するとヨウ化リチウム(LiI)のナノ保護層を形成してセルの安定性を高める利点がある一方、硫化物系の中ではイオン伝導度が相対的に低く、湿気にさらされると有毒な硫化水素が発生しやすい課題を抱えていた。
研究チームは、このLi₆PS₅Iに塩素(Cl)、アンチモン(Sb)、酸素(O)の3元素を組み合わせることで、こうした課題の解決を図った。塩素は材料内部の原子配列を変化させてリチウムイオンの移動を促進し、アンチモンと酸素は水分に強い結合構造を形成して、材料の分解と硫化水素の発生を抑える役割を果たす。
3元素の比率を段階的に調整しながら複数の組成を比較した結果、研究チームはイオン伝導度と構造安定性のバランスが最も優れた組成を導き出した。実験では、開発した材料のイオン伝導度は1.158mS/cmとなり、既存材料比で77倍に向上した。
耐湿性の改善も確認された。相対湿度30%の環境では硫化水素の発生量が40%減少し、相対湿度50%の環境に24時間さらした場合でも、既存材料が泥状に変化したのに対し、開発材料は固体状態を維持したという。
リチウム金属との安定性も高まった。電池内部で短絡直前まで耐える限界電流値は既存材料に比べて86%上昇し、リチウム金属と接した状態でも2000時間以上の安定動作を確認した。
研究チームは材料設計にとどまらず、圧力セルを組み立ててサイクル性能も評価した。開発した固体電解質を適用した全固体電池の初期放電容量は158.4mAh/gで、既存のLi₆PS₅Iベース電池の134.5mAh/gに比べ18%高かった。100回の充放電を繰り返す耐久試験でも安定した動作を確認したとしている。
キム・テヒョ首席研究員は、「硫化物系固体電解質で性能と安定性を同時に高められる材料開発の可能性を示した成果だ」とコメントした。そのうえで、「国内の素材・部品・装置企業への技術移転を通じて、全固体電池の商用化を早めたい」と述べた。
研究成果は、化学工学分野の国際学術誌「Chemical Engineering Journal」に掲載された。