Ledgerは、AIエージェントが金融取引や業務を担う「エージェント経済」の拡大を見据え、最終的な意思決定を人間に残すためのセキュリティロードマップを公表した。AIが取引を提案しても、実行時の最終承認はユーザーがハードウェアウォレット上で行う構成を軸に据える。
The Blockが4月14日に報じたところによると、LedgerはAI関連戦略を統括する初代のChief Human Agency Officerにイアン・ロジャース氏を起用した。
同社は、AIエージェントの自律性が高まっても、最終的な権限はユーザーに帰属すべきだとの考えを打ち出している。自社のハードウェアセキュリティ機器を、AI時代における取引の「最終承認レイヤー」として機能させる方針だ。
ロードマップは年内に段階的に進める。すでに開発者はLedgerのデバイス管理キットを使い、取引承認フローにハードウェアを組み込める。AIエージェントが取引案を提示しても、実行にはユーザーがLedger端末上で直接承認する必要がある。
この仕組みは一部企業で導入が始まっている。MoonPayは、AIエージェントが取引案を提示し、最終承認のみをハードウェアウォレットで行う構成を採用した。
今後は機能拡張も進める。第2四半期には、AIエージェント向けのハードウェアベースの本人認証機能を導入する予定だ。Ledgerは、ソフトウェアベースの認証は偽造される余地があるとして、ハードウェアによる信頼性確保の重要性を訴える。
第3四半期には、エージェントの意図とポリシーを管理する機能を追加する。ユーザーは信頼できる画面上でAIが提案した行動を確認し、承認できるようになる。あわせて、支出上限や特定のスマートコントラクトへのアクセス権限など、自律動作の範囲を事前に設定できるようにする。第4四半期には、実際に人間のユーザーが関与したことを確認する「人間証明」機能も導入する計画だ。
市場では、AIエージェントが今後の暗号資産取引の主要な担い手になるとの見方が広がっている。Binance創業者のチャンポン・ジャオ(CZ)氏は、AIエージェントが人間を大きく上回る件数の決済を処理するようになるとの見通しを示した。ブライアン・アームストロング氏は、AIが暗号資産ウォレットを通じて取引する時代の到来を展望している。ジョン・コリソン氏も、ステーブルコインと高速ブロックチェーンを基盤に、エージェント主導の商取引が急増すると予測した。
Ledgerは、こうした変化に伴って新たなセキュリティリスクも生じるとみている。ユーザーがログイン情報や本人確認情報、ウォレットへのアクセス権限をAIに委ねるプロセス自体が、新たな攻撃対象になり得るためだ。ロジャース氏は「重要な意思決定には常に人間が関与すべきだ」とし、ハードウェアベースの信頼基盤の必要性を強調した。
Ledgerは2014年設立。企業価値40億ドル超での米国上場を検討しているとされる。直近では、Circle出身のジョン・アンドリュース氏を最高財務責任者(CFO)に迎えたほか、ニューヨーク事務所を開設するなど、米国事業の拡大も進めている。
今回のロードマップは、Ledgerが単なるハードウェアウォレット企業にとどまらず、AIエージェント時代の認証・統制インフラへと事業領域を広げる取り組みの一環と位置付けられる。