スコット・ベセント米財務長官は14日、イラン情勢を受けて中東情勢の不確実性が高まっているとして、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを急ぐべきではないとの認識を示した。利下げの必要性そのものは否定しない一方、当面は様子見が適切だとした。
ベセント長官はワシントンで開かれたSemaforの世界経済イベントで発言した。Cryptopolitanが報じた。金利の方向性については「最終的には下がるべきだと思うが、今は待つべき時期だ」と述べた。
トランプ大統領がFRBに対し、借入コストの引き下げを繰り返し求めるなかでも、中東情勢が金融政策の判断を一段と難しくしているとの見方を示した格好だ。
ベセント長官は、イラン情勢の影響が本格化する前の米経済について、底堅く推移していたとの認識を示した。そのうえで、FRBは現時点では様子見姿勢を維持するのが適切だと述べた。
インフレについては、足元の物価上昇が長期のインフレ期待として定着する可能性は低いとの見方を示した。米政府が11日に公表した3月の物価指標では、インフレ加速ペースが2月の3倍となり、原油やガス価格の上昇が影響した。
一方で、食品とエネルギーを除くコアインフレは市場予想を下回った。ベセント長官はこれを踏まえ、直近の物価圧力が長期的な期待インフレに波及する可能性は小さいとみている。
イラン情勢が米経済にとって追い風になるのか逆風になるのかについては、明言を避けた。その代わりに、「50日後か100日後かは分からないが、今回の局面が今後50年の安定につながる転機として評価される可能性がある」と語った。
成長見通しについても、従来より慎重な姿勢をのぞかせた。2月時点では、2026年の米経済は4%を超える成長も可能との見方を示していたが、現在も同じ見通しかと問われると、見直しが必要な部分があるとの認識を示した。
また、ジェローム・パウエルFRB議長の後任に指名されたケビン・ウォーシュ氏についても言及した。人選では、開かれた思考を持つ人物を重視するとしたうえで、ウォーシュ氏は各地区連銀の運営のあり方や相互の関係を綿密に点検するだろうと述べた。
各地区連銀の組織運営にも問題意識を示し、職員の約50%が総裁の指揮命令系統に入っていない構造を課題として挙げた。
もっとも、ウォーシュ氏の承認手続きは、提出書類の遅れと上院内の反対で停滞している。ノースカロライナ州選出のトム・ティリス上院議員は、トランプ政権によるパウエル氏を巡る連邦刑事捜査の扱いが整理されるまで、最終承認を阻止する考えを示している。
ウォーシュ氏の上院公聴会は今週開かれる予定だったが、書類上の問題で延期された。開催は早くても来週になる見通しだ。
資産規模も承認プロセスにおける別の焦点となっている。資産公開書類によると、ウォーシュ氏本人の保有資産は約1億3100万ドル(約196億円)から2億900万ドル(約314億円)。これとは別に、配偶者のジェーン・ローダー名義でも数億ドル規模の資産があるという。
これは、直近のFRB議長らの資産規模を大きく上回る水準とされる。2025年のパウエル氏の資産公開書類では、資産は1900万ドル(約28億円)から7500万ドル(約113億円)だった。ウォーシュ氏は、承認された場合には該当資産を処分する意向を示している。
利下げ時期の見通しと人事承認の日程がともに不透明ななか、市場では今後の物価動向と上院公聴会の行方に関心が集まりそうだ。