2026年1〜3月期の世界PC出荷台数は前年同期比4%増となった。世界のPC市場では需要減も予想されていたが、メモリー価格の上昇を見込んだ在庫積み増しが出荷を押し上げた格好だ。足元ではPC向けDRAM価格の上昇ペースが鈍りつつあり、IntelとAMDによるAI PCの展開拡大や、モニターの高付加価値化とあわせて、下期に実需回復へつながるかが焦点になっている。
Gartnerによると、1〜3月期の出荷増は実需の回復よりも、メモリー価格上昇、いわゆる「メンフレーション(memflation)」を見越した前倒しの在庫確保による影響が大きかった。
Gartnerのリサーチ責任者、リシ・パディ氏は「DRAMやNANDの部品コストが急騰したため、2〜4月に予定された値上げを前に、サプライヤーや流通が在庫を積み増した」と説明した。そのうえで「こうした動きは低マージン製品で特に目立った」と述べた。
2025年1〜3月期にも、米国の関税賦課を前にした先行輸入で出荷が膨らんだ経緯がある。実需を上回る出荷が、2年続けて発生した構図だ。
メーカー別では、Lenovoが前年同期比9.5%増のシェア26.5%で首位を維持した。AppleはMacBook Neoが寄与して12.7%増となり、シェアは9.8%から10.6%に上昇した。パディ氏は「MacBook Neoが新規Macユーザーや教育市場を中心に堅調な需要をけん引し、価格に敏感な需要層を取り込んだ」と分析した。
一方、HPは4.9%減で、シェアは21.1%から19.3%に低下した。ASUSは10.8%増となり、Acerを抜いて5位に浮上した。
もっとも、在庫積み増しが出荷を押し上げた一方で、PC向けDRAM価格の上昇ペースが緩やかになっている点は注目材料だ。急騰局面が一服に向かえば、部品コストの負担は和らぎ、PCメーカーが新製品投入や販促を進めやすくなるためだ。
IBK投資証券によると、PC向け16GB DDR5の価格は、1〜3月期の66.7ドルから、4〜6月期は84.1ドル、7〜9月期は162.7ドルへ上昇する見通しだ。ただ、2月時点の推計から3月時点の推計への上方修正幅は縮小した。
サーバー向け64GB DDR5も、1〜3月期の696〜703ドルから、7〜9月期には879〜923ドルに上昇する見通しだが、四半期ごとの伸び率は鈍化するとされる。
PC向けDRAMの上昇鈍化でコスト圧力が和らぐなか、在庫積み増しでかさ上げされた出荷が下期に実需へ結び付くかが今後の分かれ目となる。4〜6月期以降、買い替え需要が部品価格上昇分を吸収できるかも重要なポイントだ。
AI PC刷新と高付加価値化が需要の支えに
こうした局面で、AI PCプラットフォームの世代交代も進んでいる。Intelは2026年1月、最新の18Aプロセスを採用したCore Ultra Series 3(Panther Lake)を投入し、AI PC製品群を拡充した。
GPU性能は前世代比77%、CPU性能は60%向上し、AI演算性能は約2倍になった。プラットフォーム全体のAI性能は180TOPSで、70億パラメータの大規模言語モデル(LLM)のローカル動作にも対応するとしている。
Samsung ElectronicsはGalaxy Book6シリーズに、LG Electronicsはgram Pro 2026に、それぞれPanther Lakeを採用し、製品ラインアップを刷新した。当時、Intel Korea代表のペク・テウォン氏は「2025年時点で、主要リテールチャネルにおけるIntelチップ搭載AI PCの比率はすでに40%を超えた」と述べていた。
AMDもMWC 2026でRyzen AI 400シリーズを発表し、AI PCの対象をノートPCからデスクトップまで広げた。最大50TOPSのNPUを搭載し、Copilot+ PCを支援する初のデスクトップ向けプロセッサとして、HPやLenovoなどのOEMを通じて4〜6月期から発売される。
モバイル向けのRyzen AI PRO 400シリーズでは、Intel Core Ultraに対して最大30%高いマルチスレッド性能を訴求し、法人向けノートPCやモバイルワークステーション市場にも展開を広げている。
PC市場への参入拡大を進めるQualcommも、Snapdragon XシリーズでWindows市場の開拓を本格化している。韓国ではLotte Hi-Martのチャムシル店に2カ所目の体験ゾーンを設け、Samsung Electronics、ASUS、HPなど6社の製品を集めて、消費者との接点拡大を進めている。
ディスプレイのプレミアム化も鮮明になっている。Samsung Displayは、モニター向けQD-OLEDの累計出荷が2026年3月に500万台を突破したと発表した。
量産開始から4年での到達で、年平均成長率は320%を超えるという。Omdiaによると、500ドル以上のプレミアムモニター市場に占める自発光パネルの比率は、2024年の22%から2026年には41%へ拡大する見通しだ。
Samsung Displayはグローバルで20社の顧客と協業し、150機種超のQD-OLEDモニターを投入した。2025年には、モニター向け自発光ディスプレイ市場で出荷量ベース75%のシェアを記録したという。
低反射の高強度フィルム「Quantum Black」の採用も進め、製品競争力を高めている。
Gartnerは、4〜6月期もPC価格の引き上げは避けられないとの見方を示した。DRAMやNANDのコスト上昇分が完成品価格に転嫁されれば、消費者の購買判断が後ずれする可能性があるためだ。
業界関係者は「最終的には、値上げ分を上回る体感性能の差を新製品で示せるかどうかが重要になる」と話した。