郵便配達員が配達業務にとどまらず、地域の見守り役として存在感を高めている。交通事故の被害者救助や現場の交通整理、詐欺被害の防止、高齢者世帯の安否確認など、生活に密着した安全確保の担い手として役割を広げている。
郵政事業本部は14日、配達員による地域生活支援の事例が各地で増えていると明らかにした。最近は事故や異常の発見にとどまらず、通報や初動対応まで担うケースが目立つという。
3月にはソウル江南で、交通事故を目撃した配達員が現場対応に当たった。ハギョウル駅付近を走行中だったソウル江南郵便局のユ・サンボム配達員は、事故車両を発見して運転者の状態を確認し、119番に通報。渋滞する道路で車両の接近を防ぎながら交通整理も行った。
2025年には、ソウル銅雀郵便局のイ・ソクホ配達員が、ボイスフィッシングの電話を受けていた高齢者に注意を促し、112番に通報した。約1000万ウォン相当の被害を防いだとして、警察から感謝状を受けた。
地方でも同様の事例が続いている。全羅北道・群山では、郵便物の配達中だった配達員がガス爆発の現場で倒れていた60代の市民を見つけ、応急対応を行って救助を支援した。京畿・抱川では、配達員らが商店街の分別回収場で発生した火災を発見し、初期消火に当たった。キム・コッマウム京畿地方郵政庁長は「郵便物を届ける本来の役割を超え、危機の瞬間を見守った使命感が際立った事例だ」と述べた。
こうした取り組みは一時的なものではない。全国では、配達員が高齢の独居世帯を訪問する中で緊急事態を発見し、関係機関に通報するケースが継続的に報告されている。とりわけ、移動が不自由だったり社会とのつながりが薄かったりする人にとっては、配達員が事実上の第一発見者となる場面も少なくない。
制度面での役割拡大も進む。郵政事業本部は2025年、行政安全部とともに、高齢者や孤立世帯を定期的に訪問してリスク要因を把握する「安否見守り小包」事業を正式事業化した。異常の兆候を確認した場合は自治体や関係機関と直ちに連携する仕組みで、配達業務を超えて福祉の空白を補う機能も担う。
高齢者の利便性向上を目的とした取り組みも始まっている。郵政事業本部は2025年初め、慶南の4地域で、与党「国民の力」のシン・ソンボム議員と協力し、郵便局網を活用した自治体支援金の現金配達サービスを試験実施した。金融機関の利用が難しい高齢層の不便を和らげる狙いがある。
全国規模の配達ネットワークと定期訪問という特性を背景に、郵便配達員が地域の安全を支える生活インフラとして機能しているとの見方も強まっている。日常的に住民と接する立場にあるため、緊急事態や異変をいち早く察知しやすいからだ。
一方で、役割拡大に伴う負担や安全面の課題もある。交通事故現場での対応や救助活動では、配達員自身が危険にさらされる可能性があるため、体系的な教育と保護策が必要だとの指摘も出ている。持続可能な公共サービスとして定着させるには、制度面での後押しも欠かせない。
郵政事業本部は、現場で活動する配達員の士気向上にも力を入れている。2月に就任したパク・インファン本部長は各地の郵便局を訪れ、善行を行った配達員を激励している。パク本部長は「配達員は社会の至るところで見守り役を果たし、良い影響を広げている」と話した。