OpenAIが、AIの普及を前提に米国の税制、福祉、エネルギー政策の見直しを促す政策文書を公表した。文書は暗号資産に直接触れていないものの、市場では税負担、DeFi規制、資金フロー、マイニングコストなどに波及する可能性があるとの見方が出ている。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanによると、OpenAIは4月6日、13ページの政策文書を公表した。内容には、キャピタルゲイン課税を軸とする税制への転換、自動化労働への課税検討、公共基金の創設、セーフティネットの自動拡大、AI向けエネルギーインフラの拡充などが盛り込まれた。
文書は、AIが生産と労働の構造を変える以上、従来の社会契約も再設計が必要だと位置付ける。目標として掲げたのは、「繁栄の幅広い共有」「リスクの緩和」「アクセスと選択肢の民主化」の3点だ。
そのうえでOpenAIは、「キャピタルゲインと企業利益を中心とする税制改革は、AI主導の経済における労働移行を支えると同時に、不可欠な政策プログラムの財源安定化にも寄与し得る」と説明した。
暗号資産投資家にとって最大の注目点は、キャピタルゲイン課税の扱いだ。米内国歳入庁(IRS)は暗号資産を通貨ではなく資産として扱っており、売買益はキャピタルゲイン課税の対象となる。
文書は暗号資産に直接言及していないが、キャピタルゲイン課税の比重を高める方向性は、デジタル資産の投資収益に対する税負担の増加につながる可能性がある。加えて、2026年からは暗号資産取引所に対し、売買差益を政府へ直接報告する「1099-DA」様式の提出が義務付けられる点も材料として挙がっている。
DeFi(分散型金融)では、「自動化労働」という概念が新たな論点になりそうだ。OpenAIは税制の近代化に関する項目で、「自動化労働に関連する税のような新たなアプローチを検討し得る」と記した。
文書内で定義は示していないものの、この考え方は自動売買やスマートコントラクトの実行を基盤とするDeFiの構造とも重なる。人間の労働を介さずに自動化システムが経済価値を生み出すのであれば、社会保障の財源負担も求めるべきだという議論に発展すれば、DeFiは証券性を巡る論点とは別に、税制面で直接的な規制対象となる可能性がある。
公共基金の構想も、暗号資産業界が注視するポイントの1つだ。OpenAIは、すべての市民がAI成長の果実を享受できるよう、分散投資を行う基金を組成し、その運用収益を市民へ還元する案を示した。
この基金によって、金融市場に参加していない市民にもAI主導の経済成長の恩恵を配分できると説明する。一方で、国家主導で資産を運用・分配する仕組みであり、ビットコインやDeFiが志向してきた分散型金融の秩序とは出発点が異なる。
セーフティネットの自動拡張も、暗号資産市場では別の意味を持つ。OpenAIは、失業給付、現金支援、賃金保険、教育バウチャーなどを含む時限的支援について、一定の基準を超えた場合に自動的に拡大する仕組みを提案した。
これは政府支出の自動的な増加を意味する。税収の伸びが追い付かなければインフレ圧力を強める可能性があり、その点は、総供給量が固定されたビットコインを価値保存資産とみる見方を改めて意識させる要素になり得る。
エネルギーインフラ政策は、暗号資産のマイニング産業に直結する。OpenAIは、AIの稼働に必要な送電網の拡充に向け、新たな官民協力モデルや補助金に加え、先端送電技術の導入を迅速化する権限が必要だとした。
また、国家利益に合致する場合には、広域送電網の建設を前倒しできる連邦権限にも言及した。文書には「AIデータセンターは家庭向け補助金に依存するのではなく、自らエネルギーコストを負担すべきだ」との文言も盛り込まれている。
もっとも、政策執行の過程でAIデータセンターが基幹インフラと位置付けられれば、テキサス州、ジョージア州、米北西部などで送電網へのアクセスを争う暗号資産マイニング企業には不利に働く可能性がある。
市場の観点で目を引くのは、この文書で暗号資産、ブロックチェーン、DeFi、デジタル資産が一度も言及されていない点だ。AIと暗号資産が同じ技術市場・資本市場の中にある以上、単なる記載漏れではなく、政策設計上の優先順位を示すシグナルと受け止める余地がある。
今後、米議会や財務当局が「資本に基づく税収」「自動化労働」「公共基金の投資対象」「送電網の優先順位」といった概念を法制度や行政実務に落とし込めば、暗号資産市場は税負担、規制、資金フロー、マイニングコストの各面で同時に影響を受ける可能性がある。焦点は、OpenAIの提案が実際の立法論議につながるかどうかにある。