Ajinomotoの半導体素材事業は、AIチップの供給網で存在感を強めている。写真=Shutterstock

Ajinomotoの半導体素材事業を巡り、投資家の圧力が強まっている。英投資ファンドのPalliser Capitalは14日、同社の企業価値向上策を公表し、半導体用絶縁材「Ajinomoto Build-up Film(ABF)」の価格を30%以上引き上げるべきだと提案した。AI半導体需要が拡大する局面にありながら、独占的な地位に見合う収益を十分に確保できていないとの見方を示した。

Gigazineが14日付で報じた。Palliser Capitalは、Ajinomotoが半導体素材事業の収益性を引き上げ切れていないと主張しており、とりわけABF事業を重要論点として位置付けた。

ABFは半導体パッケージの層間絶縁材として使われる中核素材だ。Palliser Capitalは、Ajinomotoがこの市場で世界シェアほぼ100%を握ると評価。AI半導体向け需要が急増する中でも、こうした優位性を価格政策に十分反映できていないと指摘した。

同ファンドは、同社は顧客に対してより高い価格を提示できる立場にあるにもかかわらず、大幅な値上げに慎重だと批判した。同社を「最も収益化されていないAIインフラ独占企業」と位置付け、現在の価格政策が収益機会の取りこぼしにつながっていると訴えた。

具体策として示したのが、ABF価格の30%超引き上げだ。ABFが最終製品価格に占める割合は0.1%未満にとどまるため、値上げによる顧客負担は限定的だとみている。重要素材でありながら、最終製品コストに占める比率が低く、価格引き上げ余地は大きいというのがPalliser側の主張だ。

もっとも、実際に値上げが実現するかどうかは需給環境に左右されるとの見方もある。日本の素材メーカーは一般に、供給不足や生産コストの急騰といった事情がない限り、値上げに慎重な傾向がある。ただ、高性能AIチップの需要拡大が続けば、ABFの供給逼迫につながる可能性も指摘されている。

市場では、需要が供給を上回る局面が価格改定の転機になるとの見方が出ている。Citrini Researchのアナリスト、ジュカン・チェ氏は、半導体各社のABF消費ペースがAjinomotoの生産能力を上回れば、最終的に値上げ圧力が強まると分析した。

今回の株主アクティビズムは、Ajinomoto以外の日本の素材企業にも広がっている。Palliser CapitalはTOTOにも企業価値向上策を提示した。TOTOは、先端半導体工程で使われる特殊セラミック素材や、極低温誘電体エッチング装置向けの静電チャックを手掛けている。

同ファンドは、チップの積層数増加とAI半導体需要の拡大を背景に、静電チャック需要も急伸すると予測。関連事業の成長性を積極的に開示し、投資拡大と財務戦略を通じて1株当たり利益を高める必要があると提案した。

市場では、AI半導体の普及が進む中、投資家の関心が完成品メーカーだけでなく、素材・部品企業の価格決定力や収益構造にも向かい始めたことを示す事例だとの受け止めが出ている。Ajinomotoについても、食品企業のイメージを超え、AI半導体サプライチェーンの中核企業として再評価が進んでいる点に注目が集まっている。

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