ビットコイン(BTC)は地政学リスクの高まりを受けて一時軟調な展開となった。ただ、市場では需給の底堅さやテクニカルの改善を背景に、反発余地を見込む見方が出ている。
CoinDeskによると、12日(米国時間)、米国のJD・バンス副大統領が、パキスタンで進められていたイラン関連の和平協議が決裂したと明らかにした。これを受けて世界の金融市場ではリスク回避姿勢が広がり、ビットコインも短期的に下押しされた。
一方、暗号資産市場の需給環境はなお堅調だ。ビットコイン保有で世界最大の上場企業であるStrategyは先週、約3億3000万ドル相当のビットコインを追加購入し、保有量を76万6970BTCに増やした。一部推計では、こうした動きを踏まえると今週は約8000BTC規模の追加需要が発生した可能性があるという。
機関投資家資金の流入も続いている。SosoValueの集計では、米国上場のビットコイン現物ETFへの今週の純流入額は7億8700万ドル(約1181億円)となり、3月初旬以降で最大の流入を記録した。累計流入額は約20億ドル(約3000億円)に達した。
市場では、流入額の大きさそのものよりも、資金流入の方向性と継続性が重視されている。10X Research創業者のマーカス・ティーレン氏は、Strategyによる継続的な買い増しと、ETFを通じた供給吸収が続く限り、ビットコインの下値は構造的に限られやすいと指摘した。
同氏は、売られ過ぎを示すテクニカル指標に加え、マイニング関連株や米国株全体でリスク資産選好が持ち直している点を材料に、ビットコインのメインシナリオとして8万8000ドルを見込んでいる。
関連資産の動きも追い風となっている。TeraWulf、Bitdeer Technologies、IRENなど主要マイニング株は今月に入り10~30%上昇した。米国株でもS&P 500が約4%上昇し、NVIDIAも上昇基調を維持している。市場の関心が再び成長株やAI関連に向かっていることを示すとの見方がある。
米投資家の現物買い需要の強さも示された。CoinGlassによると、Coinbaseプレミアム指数は0.0586%まで上昇し、昨年10月以来の高水準となった。米国内の現物買い圧力が海外市場より強いことを示すシグナルと受け止められている。
規制を巡る不透明感の後退期待も市場心理を支えている。21Sharesの暗号資産リサーチ戦略責任者、マット・メナ氏は、米国で議論されている「クラリティ法案」が成立すれば、暗号資産市場に構造的な上昇経路をもたらし得ると評価した。
同法案には、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の管轄範囲をより明確にし、デジタル資産が証券か商品かを判別する基準を盛り込む内容が含まれる。Polymarketの参加者は、同法案が年内に署名される可能性を65%とみている。
もっとも、同法案は2025年7月に下院を通過したものの、現在は上院で継続審議となっている。
今後の値動きのシナリオも具体化している。市場では、ビットコインが7万3000ドルを回復すればまず7万5000ドルを試し、その後8万ドルを上抜ければ9万ドル台まで急伸する可能性があるとの見方が出ている。マクロ環境が安定的に推移すれば、第2四半期末に10万ドルへ到達する可能性を指摘する声もある。
供給面でも、7万ドル台後半では売り圧力がそれほど大きくないとの分析がある。インドのGiottus取引所のCEO、ビクラム・スブララジ氏は、供給分布データを踏まえると、7万2000ドルから8万ドルの価格帯にある流通ビットコインは全体の約1%にとどまると述べた。
同氏は、現在のレジスタンスラインを継続的に上抜ければ上値側の供給は薄く、比較的速いペースで価格形成が進む可能性があると説明した。
総じてみると、地政学リスクの高まりは短期的なボラティリティを押し上げているものの、ビットコイン市場では、ETFへの資金流入、大口保有企業の追加購入、米投資家主導の現物需要、規制明確化への期待が同時に相場を支える材料として作用している。もっとも、こうした強気シナリオは、リスク資産全般の投資家心理が大きく悪化しないことが前提となる。