政府がGoogleによる国内高精度地図データの国外利用を条件付きで認める中、NaverとKakaoが地図サービスの機能強化に動いている。経路案内の競争力を高めるGoogle Mapsの影響力拡大をにらみ、両社は自社サービスの強みであるローカル情報や利用者接点の磨き込みを進めている。
業界によると、Naverは6日、「Naver Place」に星評価を再導入した。悪質レビュー対策を理由に2021年10月に廃止して以来の復活となる。
星評価を表示するかどうかは店舗側が選べる。導入初期は、投稿者本人と事業者だけが閲覧できる仕組みとした。レビューは投稿後3カ月以内に限って修正を認めるなど、不正利用を防ぐ措置も盛り込んだ。
Kakao Mapは、決済履歴や現地で撮影した写真で裏付けた認証レビューを強化している。こうした認証付きレビューを上位表示する「役立つ順」の並び替えも導入した。レビューを非公開にした状態でも悪質レビューを通報できる機能も追加している。
KakaoTalkの友だち同士でリアルタイムに位置を共有する「友だち位置」では、昨年11月の機能改定以降、共有時間を無制限に変更したのに続き、友だちが近くに来ると自動で通知する機能を追加した。
また、ソウル市交通室未来先端交通課と約2年にわたり進めてきた超精密バスデータの生産・検証体制については、2026年下半期の正式導入に向けた協議が進んでいる。
星評価と認証レビュー、手法は違っても狙いは同じ
両社のアプローチは異なる。Naverは、テキストやキーワード中心だったレビューに星評価を加え、満足度をひと目で把握できるようにした。定性的な情報に数値の指標を重ねることで、店舗やサービスの評価を分かりやすく示す狙いがある。
一方のKakaoは、レビューの信頼性向上を前面に打ち出す。決済履歴や現地写真による認証を通じて虚偽レビューの可能性を抑え、実際の消費行動と結び付いたデータを蓄積する方針だ。
地図上で桜の名所約100カ所の開花状況をリアルタイムで示す「桜マップ」のように、季節情報や場所データを生活サービスへつなぐ取り組みも、この延長線上にある。
手法は違っても、両社が狙うのは共通している。利用者がどこを訪れ、どのルートで移動し、どの場所を選んだのかという「経験データ」の確保だ。
地図プラットフォームは、利用者の位置情報や移動経路、場所の嗜好を直接把握できる代表的なサービスとされる。検索が「意図データ」、コマースが「購買データ」を集めるのに対し、地図はその間を埋めるオフライン行動データを幅広く取り込める。
こうした経験データは、短期的には広告配信の精度向上やレコメンド機能の高度化に活用できる。中長期的には、自動運転やデジタルツイン、AIエージェントの主要な入力データになる可能性もある。人流や時間帯別の混雑度、移動パターンの蓄積が進むほど、活用範囲は経路案内にとどまらない。
ローカルデータはGoogleが短期で代替しにくい領域
もっとも、高精度地図を確保しただけで競争力がすぐに追い付くわけではない。NaverとKakaoが長年積み上げてきた商圏データベース、利用者レビューのエコシステム、決済やモビリティとの連携は、短期間では築きにくい資産だ。
国内事業者の利用基盤もなお厚い。MobileIndexによると、先月の月間アクティブユーザー数(MAU)は、Naver地図が2952万人で過去最高を記録した。Kakao Mapは1282万人、Google Mapsは968万人だった。
小規模事業者が直接登録し、利用者がレビューを積み上げてきた構造に加え、配達、タクシー、飲食店予約など生活密着型サービスとの連携網は、資本投下だけで複製できるものではない。両社が今回、新機能の追加そのものよりも、既存データ資産の品質と信頼性の向上に重点を置いたのはこのためとみられる。
Googleの存在は、国内の地図サービス競争の軸を「経路案内」から「経験データ」へ移すきっかけになりつつある。
業界関係者は「Googleが高精度地図を確保したとしても、国内事業者が数年かけて築いたレビュー基盤や生活サービスとの連携網が一朝一夕で揺らぐことはない」とした上で、「最終的には、利用者がどれだけ多くの経験をプラットフォーム内に残すかが競争力を左右する」と話した。