AWS Koreaは10日、金融機関におけるAI活用の拡大を見据え、自社データセンターでAI基盤を構築・運用するよりも、変化への追随がしやすいクラウドの活用が現実的な選択肢になるとの見方を示した。AI関連技術の進化が速く、内製インフラでは継続的な対応負担が大きいことを理由に挙げている。
Amazon Web Services Korea(AWS Korea)で金融事業を統括するノ・ギョンフン氏は、同日開催した金融開発者向けイベント「ゲームデイ」の会場で、「金融でクラウドを使う上で、技術面、規制面で問題はない。特にAIが金融のクラウド導入を加速させるだろう」と述べた。
同氏は、AI技術の進化が極めて速い現状では、企業が自社データセンターにAIインフラを自前で構築する方式は負担が大きいと指摘した。新技術が登場した際、既存の構成では十分に取り込めない可能性があるため、現時点では変化に柔軟に対応できるクラウドベースのAI基盤が有力だと説明した。
その上で、「いまのAIは、新しい技術がこれまでの努力を無力化しかねないほど急速に進化している」と強調した。金融業界でも、クラウドなしではAIの変化に対応しにくいとの見方が広がっており、まずオンプレミスで構築した後、クラウドへ移行する例も出ているという。
さらに、「小型言語モデル(SLM)をベースにAI基盤を自前で構築した組織でも、性能面の課題に直面するケースが多い」と述べた。AWS KoreaがIDCと共同で金融機関約150社を対象に実施した調査では、約60%が「AIを理由にクラウドを利用している、または導入を計画している」と回答したという。
今回のゲームデイは、理論中心の教育ではなく、シナリオベースの実践形式で実施した。参加者はリスクのないサンドボックス環境でAWSのサービスやアーキテクチャパターンを適用し、検証を繰り返しながらミッションの達成を目指した。獲得ポイントの合計で最終的な優勝チームを決める方式で、2026年のゲームデイでは、仮想企業の環境で発生したアプリケーション障害の復旧と、レガシーJavaコードのモダナイズが課題として与えられた。
イベントには、銀行、カード、証券、保険、フィンテックなど24の金融機関から96人が参加した。銀行ではNH農協銀行、KB国民銀行、Shinhan Bank、Hana Bank、Shuhyup Bankのほか、KakaoBank、K Bankが参加した。
証券、カード・決済分野では、KB Securities、Meritz Securities、Next Securities、BC Card、Hyundai Card、Kakao Pay損害保険が参加した。保険分野ではAXA損害保険、Seoul Guarantee Insurance、Mirae Asset Life Insurance、Lotte損害保険、Samsung Fire & Marine Insurance、Kyobo Life Insuranceが名を連ねた。フィンテック分野では8percent、Korea Credit Data、Goodrich、Tmoney Mobility、Viva Republica(TOSS)が参加した。
ノ氏は「AIという言葉は多用されるが、実際の開発に適用する事例はまだ多くない」とした上で、「ゲームデイを通じて実際に使い、現場に戻って適用してみるきっかけになってほしい」と語った。
AWS Koreaは今回のイベントで、AI基盤向け開発プラットフォーム「Kiro」を軸にユーザー層の拡大を図る方針も示した。Kiroは「Amazon Q Developer」を発展させたエージェント型の開発ツールで、チャット形式のコーディング(バイブコーディング)にとどまらず、要件定義、設計、開発を段階的に支援する「仕様主導開発」をサポートする。要件を入力すると、AIが要件リストと承認基準を自動生成するという。
AWS Koreaで金融分野のプリンシパル・ソリューションアーキテクト(SA)を務めるク・テフン氏は、「開発と運用をまたぐエンタープライズAI開発の現場で有用だ。AWS環境との親和性が高い組織であれば、Kiroをより手軽に活用できるはずだ」と述べた。