メモリ高騰は、企業のPC更改基準そのものを見直す要因になっている(写真=Shutterstock)

メモリ価格の急騰を受け、企業のPC更改戦略に見直しが広がっている。従来の3〜5年周期で端末を一斉更新する方式から、実際の利用状況に基づいて更新対象を絞り込む方式へと軸足が移りつつある。

TechRadarが9日(現地時間)に報じたところによると、PCの製造原価に占めるRAMの比率は足元で約35%に達した。数カ月前の15〜18%から大きく上昇しており、企業が受け取る更新見積もりも従来比で30〜60%高くなっている。サプライヤーが提示する価格の有効期限も数時間単位まで短くなるなど、価格変動は一段と激しくなっている。

アナリストは、人工知能(AI)システム向け需要の拡大で上昇した部品価格をメーカーが購入企業に転嫁し続ければ、2026年下半期にPC価格が15〜20%上昇する可能性があると警告した。

こうした環境下で大きく変わっているのが、PC更改の判断基準だ。これまでは導入からの経過年数に応じて一律に更新する手法が一般的だったが、最近は購入時期ではなく、CPU使用率やメモリ消費量、アプリケーションの利用状況といったデータを基に対象端末を選ぶ手法が広がっている。

この見直しにはIT部門だけでなく、財務、調達、セキュリティ部門も関与するケースが増えており、端末更改の基準そのものを再設計する動きが出ている。

実際、ある金融機関では年間約7000台のノートPCを更新する計画だったが、利用データを分析した結果、実際に更新が必要な台数は約600台に絞り込めたという。

別の企業でも、約5000台の更新計画を検証したところ、約1400人の利用者はより低い性能の端末でも業務に支障がないことが分かり、100万ドルのコスト削減余地を確保した。

こうした分析からは、性能低下の原因が必ずしもハードウェア不足にあるわけではないことも見えてきた。非効率なソフトウェアや不要なバックグラウンドプロセスがボトルネックになっているケースも少なくなく、未使用プログラムを削除するだけで性能改善とコスト抑制を同時に進められるという。

端末の利用期間を延ばす動きも主要な対応策になっている。Forresterが4万台の端末を運用する金融機関を分析したところ、全端末の約40%で利用期間を4年から5年に延長した場合、年間更新率は25%から23%に低下した。3年基準で見れば、ハードウェア費用として約200万ドルを抑えられるとしている。

端末構成そのものを見直す企業もある。仮想デスクトップインフラ(VDI)やデスクトップ・アズ・ア・サービス(DaaS)を活用し、処理を中央サーバー側で担えば、すべての従業員に高性能PCを配布する必要性は薄れる。

もっとも、開発者やエンジニアのようにローカル環境での処理性能が重要な職種では、こうした手法の適用は限定的だという。

調達戦略にも変化が出ている。企業は一度に大規模な更新を実施するのではなく、実需に合わせてアップグレード時期を分散する方向に動いている。AI PCも例外ではなく、高性能が必要な一部業務を除けば体感差が限定的な可能性があるため、まずは小規模な試験導入を行い、その後に本格展開の可否を判断する手法が増えている。

業界ではこうした状況を「RAMgeddon」と呼ぶ。メモリ価格の変動が大きくなるなか、PC更改を固定サイクルで管理する手法は通用しにくくなっており、実利用データに基づく柔軟な運用戦略の重要性が高まっている。

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